東京パラ、10競技で本番直前に「クラス分け」 コロナ禍の救済措置も混乱の可能性

2021年5月30日 06時00分
リオデジャネイロ・パラリンピック競泳男子100メートル平泳ぎでスタートする多様な障害の選手ら。クラス分けで公平な戦いを実現している=2016年9月(共同)

リオデジャネイロ・パラリンピック競泳男子100メートル平泳ぎでスタートする多様な障害の選手ら。クラス分けで公平な戦いを実現している=2016年9月(共同)

 東京パラリンピック開幕まで3カ月を切る中、公平な競争のために選手の障害の程度を判定して種目を分ける「クラス分け」に支障が出ている。新型コロナウイルス禍で、主な判定の場となってきた国際大会の中止が相次いだためだ。出場に必須なクラス確定が済んでいない選手を救済しようと、国際パラリンピック委員会(IPC)は急きょ、本番直前に東京でクラス分けを実施する方針を発表した。選手には朗報だが、クラス変更や、出場資格がないと判定される恐れもある。(神谷円香)

◆救済措置

 クラス分けは、国際大会に初出場する選手のほか、進行性の病気などにより体の状態が変わりうる選手は定期的に受ける。一度では決まらず、何度か受けて確定する場合もある。
 陸上で代表に内定している車いすの伊藤智也選手(57)=バイエル薬品=は、昨年末で前回判定の有効期限が切れた。東京大会が予定通り開催されれば問題なかったが、今年は新たに判定を受けなければ出場できない。中枢神経系の難病を抱え、コロナ感染の重症化リスクを恐れて宿泊を伴う遠征を自粛。国際大会には出ず、判定を受けられずにいた。
 クラス分けのために出場を検討した今年4月の国際大会は延期されたが、同月、IPCが陸上や競泳など10競技を対象に東京で判定の機会を設けると発表。今月11日、東京・国立競技場であったテスト大会に、自宅のある三重から日帰りで参加した伊藤選手は「体の安全を考え、救済措置でクラスを頂き本大会に」と話した。

◆クラス変更のリスク

 同様の事態に直面する選手は世界中にいる。東京まで来て判定を受けても、本番直前に競技するクラスが変わってしまうと影響が大きい。出場資格がないとされる恐れもある。
 四肢や体幹の障害は、競技前の医学的な診断に加え、本番の競技中の動きも見て確定となる。選手は競技を終えても、判定結果が出るまで安心できない。
 クラスの変更で選手やレースが増減して日程まで変われば、他の選手にも影響が及ぶ。こうした事態を避けるため、IPCは当初、本番直前にクラス分けを実施する方針ではなかった。救済措置の発表後も、できるだけ事前にクラスを確定してもらうよう各国のパラリンピック委員会に求めている。

◆計測、判定の困難さも

 判定の難しさもある。視覚障害は競技の観察はなく、精密機器で視野などを測定して判定する。通常、機器は医療機関にあり、持ち出すようなものではない。国際クラス分け委員で国立障害者リハビリテーションセンターの眼科医、清水朋美さんは「本来は移動して使う設計ではなく、(持ち出すと)精度が保てず正確に測れない場合もある」と指摘する。
 パラスポーツへの理解が進む欧州では、大会時に地元の病院でクラス分けを行うケースもあるという。東京パラでの具体的な実施方法は検討中だ。

 クラス分け 医療従事者ら資格を得た「国際クラス分け委員」が医学的診断や競技中の体の動きなどから判定する。クラスは競技ごとに障害の種類や重さに応じて細かく分かれ、陸上男子100メートルではクラス別に16種目が行われる。パラリンピックには、四肢や体幹の障害、視覚障害、知的障害で、IPCの定める基準を満たさないと出場できない。


おすすめ情報