<首都残景>(24)亀戸香取勝運商店街 フェイクの街 真の輝き

2021年5月30日 07時05分

看板建築を再現した店舗が並ぶ亀戸香取勝運商店街。亀戸香取神社の参道でもある=いずれも江東区で

 建物の正面に銅板などを張った古い商店を見たことがあるのでは。「看板建築」と呼ばれ、関東大震災の復興期に東京で生まれた独特の様式である。
 耐火のために木造家屋を覆い、自由な発想で和洋折衷の意匠を凝らした点に特徴がある。
 最近は街で見つけることも少なくなったと思っていたら、あるところにはあるのだ。
 亀戸香取神社(江東区)の参道につながる亀戸香取勝運商店街。足を踏み入れると、まさに看板建築が軒を連ねていた。

 和菓子店、美容院、青果店、居酒屋など、どれも郷愁をそそる姿で昔の映画の世界に迷い込んだかのようだ。
 実はこの街並み、十年前に商店街活性化の一環でつくられたフェイク(偽物)である。
 和菓子「山長(やまちょう)」の三代目社長で商店街事務局長の長束光芳さん(59)が説明してくれた。
 「ここは歴史のある商店街ですが、いつのまにかシャッターが閉まった店も増え、お客さんの数も減りがちでした。そんなとき都の活性化補助金をいただけることになり、どんな街並みにするか知恵を絞ったんです」
 最初は、木造の江戸風なども考えた。だが、最後に残った案は、昭和の町の再現だった。
 「昭和三十七年生まれの私が子供の頃は、街に人があふれて一番にぎやかだった時代です。あの活気を取り戻したかった」
 加盟の商店の協力を仰ぎ、建物を改修。袖看板や屋台などをつくった。路面は石畳風に。これもコンクリートに切り込みをいれたフェイクだという。
 だとしても、この街の居心地の良さは特筆ものだ。銅板に緑青が吹き始めた居酒屋「発酵文化応援団」でくつろぐと、遠い日の記憶が押し寄せてくる。

緊急事態宣言のため酒類の提供をやめて「フィンランドブルーベリーヴィネガー」など発酵飲料の開発を楽しむ「発酵文化応援団」の喜連川麻理さん

 時節柄、ノンアルコールのレモンハイで乾杯。和服にマスク姿の女将(おかみ)、喜連川麻理さん(56)が「皆さん、おしゃべりを楽しみに来てくださる。お酒がなくても案外、商売はできるのかも」と明るく笑った。
 スポーツの神、亀戸香取神社には東京五輪の成功を祈る幕が掲げられていた。前回の東京五輪は昭和三十九年。明日への希望に満ちた時代だったのかな。あれから半世紀が経過したが…。

「スポーツ振興の神」として多くのスポーツ選手が訪れる亀戸香取神社では競泳の池江璃花子選手の「パワー全開祈念」が掲げられている

文・坂本充孝/写真・戸田泰雅
◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード

PR情報