<くるみのおうち>(10)コロナ禍の日々 今こそ触れ合いの場を

2021年5月30日 07時14分

23日にあったイベントで、火おこしの手順を教わる参加者=麻生区の黒川青少年野外活動センターで

 昨年四月、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が出されました。息子が余暇活動として楽しんでいたゲームセンターや映画館が一斉に閉鎖されてしまったのが大きなストレスとなり、多動行動やこだわり、イライラすることが一気に増えました。
 多くの発達障害のある人にとって、余暇活動は生きていく上で必要不可欠。小さな変化が大きな影響を及ぼすことも多くあります。わが家も本人、親ともに非常に苦しい時期でした。
 少しでも発散できたらと、一緒にランニングやサイクリングに出かけましたが、不満は一向に収まりません。四六時中付き添うのは難しく、息子が単独行動になることもありました。
 そんなある日、「息子さんは警察にいます」と電話がありました。息子の行動が、住民の方に迷惑行為とみなされたためでした。
 警察から「どうやって再発防止するつもりですか」と聞かれた時、私は目に涙をためながら、思わず天を仰ぎました。
 息子の特性上、注意するだけで本人が行動を変えるのは難しい。ずっと付き添うこともできない。「一体どうすればいいのでしょうか」と逆に私が聞きたいくらいでした。
 何度も支援の必要性を訴えてきたのに「ヘルパーが見つからない」という答えでした。ただ、この一件で要支援の優先順位が上がり、約一カ月半後にヘルパーが見つかったのです。
 日本の障害者福祉は「転ばぬ先のつえ」ではなく、「転んで大けがをして、やっとつえが差し出される」と実感しました。社会から放置された結果として、この一件が起きたように思えてなりませんでした。
 コロナ禍と、このような厳しい家庭環境でしたが、定員を絞り、密を避けながら、多くの仲間の力を借りて、地域食堂やプログラミング講座、オンライン交流会などの事業活動を続ける努力をしました。今月二十三日には黒川青少年野外活動センター(川崎市麻生区)で、里山の整備や火おこしを体験しました。
 久しぶりに会えた人たちの近況を聞くにつけ、多くの当事者と家族が大変な日々を送っていることをあらためて認識しました。だからこそ、あたたかな触れ合いや、つながりが感じられるコミュニティーが必要なんだ。くるみは「できる人が、できる時に、できる分だけ」で活動を続けていこう、と決意を新たにしています。 (太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◇次回は6月6日に掲載予定
 ◇ご意見・ご感想は、川崎支局(電子メールkawasaki@tokyo-np.co.jp)へ。

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