非正規公務員 新制度から1年 女性たち、苦境改善へ連携 「公共サービスの危機」懸念

2021年5月31日 10時38分
 DVや児童虐待の相談業務といった仕事の増加に伴い、増える自治体の非正規公務員。大半は女性で、非正規の地位を安定させようと昨年四月に導入された会計年度任用職員制度によって一層つらい立場に追いやられている。期末手当(ボーナス)の支給対象にはなったが、一年ごとの採用が厳格になったためだ。そうした中、苦境に立つ女性たちが、自ら現状を発信、改善を求めていこうと動き始めた。 (小林由比)
 「気持ちを安定させて働きたいけれど、来年のことを考えると…」。都内の公立学校の図書館で非正規の司書として働く女性(44)は不安げだ。
 現在働く自治体に採用されたのは十二年前。契約を更新しながら、購入図書の選択や本の整理にとどまらず、子ども一人一人の個性や状況に配慮して接し、図書館が安心できる場になるよう心掛けてきた。若手の教員から授業のテーマに沿った本の相談をされることも。新型コロナウイルス禍の今は、本や館内の消毒が新たな仕事として加わった。図書館の使い方などの指導も、密を避けるため、子どもを少人数に分けて何度も繰り返す必要がある。
 総務省の二〇二〇年の調査によると、全国の自治体で働く非正規公務員は約六九・四万人。うち九割を会計年度任用職員が占め、さらにその四分の三以上が女性だ。
 期末手当の支給で、女性の年収は百九十万円から二百三十万円に増えた。一方で、更新はあるが、年度ごとの採用が基本となり、雇用の不安定さは増した。「教員と違う立場で子どもと接し、本を手渡すには経験の積み重ねや継続した関係が大事なのに」。専門性を生かせ、やりがいはあるが、給与は手取りで月約十六万円。「夫と共働きで何とか子育てできるが、司書仲間にはダブルワークをするひとり親もいる」と話す。
 年度ごとの契約で賃金は低く、昇格もない。三月下旬、当事者がSNSなどで参加を募って開いたオンラインの緊急集会「官製ワーキングプアの女性たち」では、さまざまな仕事に携わる非正規職員が窮状を訴えた。DV対応などに当たる婦人相談員の「コロナ禍で相談が増え、やる気だけでは無理」、ハローワーク職員の「コロナで混乱する中で契約更新があり、理由も分からないまま職場を去らざるを得なかった同僚がいた」など内容は多岐にわたった。
 「住民サービスに不可欠なエッセンシャルワーカーが、こうした状態にあることを、社会全体が課題としてとらえるべきだ」。非正規公務員の問題に詳しいジャーナリストで和光大名誉教授の竹信三恵子さんは訴える。最近はさらなる経費削減のため、官が担ってきた仕事を民間に委託する例も増加。自治体の非正規職員ではないが、そこにも低待遇の働き手がいる。竹信さんは「相談業務などは、従事する側も利用する側も経済的、精神的に余裕がなく、声をあげにくい人が多い。そのため問題が覆い隠されてきた」と指摘する。
 こうした流れを変えようと、集会の企画者や参加者らは四月、「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を結成した。今後は、問題解決に向けた調査や提言に加え、当事者同士の交流や学習会などを進める予定だ。中心メンバーの瀬山紀子さん(46)は「このままでは公共サービスが崩れてしまう。私たち女性がまとまって動くことで、非正規公務員全体の問題を解決したい」と話す。
 まずは六月四日まで、当事者から現状を聞きとるアンケートをネット上で実施中。既に八百件以上の声が寄せられているという。回答は、ホームページ=「はむねっと 非正規」で検索=から。集計結果は同月中に公表する予定だ。

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