自民に大幅譲歩したのに自民がつぶすLGBT法案 保守派の抵抗激しく…今国会の提出断念

2021年6月1日 06時00分
 超党派で合意したLGBTなど性的少数者の課題に関する「理解増進法案」は、自民党内で「差別は許されない」との表現への了承が得られず、今国会への提出が見送られることになった。法案には、職場や学校などでの性的少数者の差別解消に実効性を持たせるための具体策は盛り込まれず、さらなる法整備に向けた入り口となるはずだった。自民党の保守派の一部議員がかたくなで、スタート地点さえ遠のいている。 (中根政人、奥野斐)

◆手続き8時間30分空転

 「自民党内の手続きは8時間30分を費やした。総務会で了承がいただけていない。国会が終わるまで執念を持って取り組みたい」
 自民党の馳浩元文部科学相は5月31日、理解増進法案をまとめた超党派の議員連盟が開いた総会で、党内の状況を報告した。
 法案は、自民特命委が策定した要綱案を基に、与野党の実務者協議で修正が図られた内容だ。立憲民主など野党側は国会に「差別解消法案」を提出。企業や教育現場に助言、指導、勧告などができる内容だったが、自民党が消極的だったため、大幅に譲歩して啓発活動を促すことなど理念中心の案で決着した経緯がある。
 野党側は「大きな隔たりが残っている」(立民・西村智奈美衆院議員)としながらも、法案を足がかりに、法に基づく施策をさらに拡充させる方向性を確保することを狙った。

◆自民、三役一任の結果

 しかし、自民党内の手続きが始まると、一部議員から異論が噴出。特に、実務者協議で基本理念に盛り込まれた「差別は許されない」との文言に対し「行き過ぎた差別禁止運動につながる」「差別の範囲が明確でなく、訴訟が増える」との批判が相次いだ。
 結局、党内では特命委、政調審議会は通過したものの、最終決定機関の総務会で意見集約ができず、党三役に一任という形に終わった。特命委員長の稲田朋美元防衛相は自身のツイッターに「私はあきらめていない。今国会で成立させたい」と書き込んだが、佐藤勉総務会長は31日の党役員会で「三役で協議した結果、今国会には提出しないと確認した」と明言した。

◆「実効性ある差別禁止規定を」

 自民党の要綱案をベースにした法案を、自民がつぶしたことになる。立民の枝野幸男代表は31日の記者会見で「国会日程上、無理だとの発言が聞こえてくるが、この法案だけ日程のせいにするのは恣意しい的だ」と強調。東京五輪の大会ビジョンに「多様性と調和」を掲げていることを念頭に「主催国として、開幕前につくっておかねばならない法律というのが与野党共通の考え方だ」と主張した。
 自民内の一部が抵抗を続け、議論が下火になってしまうのか。ハラスメント対策に詳しい独立行政法人労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は「(増進法案には)人権侵害や差別を受けた人が訴える法律上の根拠も、救済の仕組みもない。実効性のある差別禁止規定が必要だ」と、差別やハラスメントを明確に禁止する法整備の必要性を訴えた。

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