メンタルトレーナーに聞く 重圧とどう向き合う?<大坂なおみ全仏棄権>

2021年6月2日 06時00分
テニスの全仏オープン女子シングルス1回戦の大坂なおみ=5月30日、パリ(ゲッティ=共同)

テニスの全仏オープン女子シングルス1回戦の大坂なおみ=5月30日、パリ(ゲッティ=共同)

 テニスの四大大会、全仏オープンを5月31日に突如棄権した大坂なおみ(日清食品)は、ここ数年うつ症状に悩まされていると告白した。強い重圧を受けるトップアスリートが、精神面で問題を抱えることは決して珍しくはない。選手や周囲はどう向き合うべきなのか。

◆テニスは心の格闘技

 アスリートのメンタルヘルスに詳しい近大の西田順一教授(スポーツ心理学)は「テニスは心の格闘技といわれるくらい冷静さを保ちながら闘争心を振り起こして相手に向かっていくスポーツ。心のめりはりを付けるのは難しい」と指摘する。
 大坂は近年、急激に世界ランキングを上げてきた。初めて100位以内に入ったのは2016年。そこからわずか4年余りでグランドスラムを計4度制し、ランキングは一桁に。SNSでも積極的に思いを発信する23歳への注目度は、日に日に増していった。
 告白の引き金となったのは試合後の記者会見の拒否。西田教授は「完璧主義で感受性が豊か。感情をリセットできない中で会見を行うのは難しく、ストレスを感じたのではないか」とおもんぱかる。

◆ゆっくり話を聞いてもらうことが必要

 04年からアスリートを心理面で支えてきた日本メンタルトレーナー協会理事の浮世満理子さん(57)も、「気持ちが落ちてしまう質問もある。自分がサポートする選手には、かき乱されないようにシミュレーションするが、そういうトレーニングをしていない場合はしんどいかもしれない」と話す。
 大坂はかつて会見を拒否したことや、会見で「泣きそう」と言い残して途中退席したこともある。四大大会では会見出席が義務となっているが、テニス選手もサポートする浮世さんは「選択する自由はあってもいいのでは」と提案。「試合に臨む選手は集中力が極限まで研ぎ澄まされ、過敏な状態。高いパフォーマンスが出せる半面、会場のにおいや客席で誰かが歩く音など、われわれが『そんなこと?』と思うようなことにもストレスを感じる」と明かす。
 復調へ必要なのは、自分が何にストレスを感じ、どうしたいのかを確認すること。浮世さんは「独りで抱えると結論が早くなってしまう。ゆっくりと話を聞いてもらい、状況を整理できると、落ち着いてくるはず」と強調する。(中川耕平、兼村優希)

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