空き家処分を記者が体験 手間と費用は想像以上 解体見積もり300万円 仏壇の閉眼供養も

2021年6月3日 07時47分

空き家の内部。畳や戸が外されている=新潟県柏崎市で

 相続後にとりあえずそのまま置いておく、いわゆる「問題先送り空き家」が各地でみられる。それはわが家にもあった。筆者(37)の父(73)の実家は新潟県柏崎市の海沿いにある。祖父母が亡くなった後、約20年、空き家だった家の処分に、娘の私が動くことになった。 (奥野斐)
 「柏崎の家をどうにかしなきゃだなあ…」。昨年八月、帰省した際に聞いた父の一言が始まりだった。父は体調を崩し、空き家の処分を考えていた。だが、六十キロ離れた県内の自宅から定期的に風通しに通っていたとはいえ、長期間“放置”状態の家を、父に任せていたらいつ片付くか分からない。了解を得て、私が柏崎市の担当課に電話した。
 対応してくれたのは市建築住宅課の山本康太さん(37)。解体を考えていることを伝えると、市が協定を結ぶ柏崎建設業協同組合を紹介してくれた。「空き家の処分で連絡してきてくれる人はほとんどいないですよ」と山本さん。専門家を招いた市の無料相談会もあると情報をくれた。
 父は一昨年、この相談会に参加していた。建設業協同組合に連絡すると、相談会で父と話をした空き家担当の副理事長、中澤哲郎さんが覚えていてくれ、やりとりすることになった。家は少なくとも築五十年ほどたち、一部リフォームしているものの、住める状態ではない。「自分は都会に出て、地方の実家を処分したい。でもどうしたらいいか分からない、という声は多いですよ」と中澤さん。
 解体の方針で父やきょうだいの了解を得ており、数社に見積もりを取った。どれも三百万円以上。広い道に面していないので重機が入れず、廃材を手作業で運ぶ必要があった。補助制度がある自治体もあるが、市に問い合わせると「現時点ではありません」。
 解体の意思はあっても費用を用意できない場合もある。住宅があれば税の特例措置で六分の一に減額される固定資産税も、解体後の更地には適用されない。高額な解体費、跳ね上がる固定資産税…。空き家が増える一因に思えた。「空き家や更地を売る人にも買う人にも、助成金が出る仕組みがあれば」と中澤さん。
 解体費は父の貯蓄を充てることになり、昨秋、いよいよ解体できる!と思ったが、甘かった。建材のアスベスト(石綿)調査や、上下水道、電話線、ガスの状態確認や手続き、仏壇をしまう「閉眼供養」もある。
 さらに、中澤さんいわく、「一番大事なのはお父さんの気持ち。心残りがないよう、解体前に見に来た方がいいですよ」。雪が降り、解体は春以降に持ち越された。
 四月上旬、緊急事態宣言が解除された合間に、空き家を見に柏崎市に行った。人口八万人余り。二〇一六年の調査で市内に千三百九十七件の空き家が確認された。管理が行き届いていない「不良」や「危険」は百四十六件あった。
 お世話になった市建築住宅課で話を聞いた。岡本章宏さん(40)は「空き家でも表は見えっ張り。玄関は風当たりが強くないところにあるので意外ときれい。裏の顔を見てください」。
 岡本さんや前出の山本さんは、市民らからの連絡をもとに空き家の状態を調べて所有者に連絡。災害時に屋根や外壁が飛ぶリスクもあるため、適切な管理を求めている。
 「解体で行き詰まるのは資金面と意識面。相続しても『住んでもいない家をなぜ自分が…』という声もある」と山本さん。岡本さんは「空き家になる前に、家の行く末をぜひ家族らで話し合ってほしいですね」と呼び掛ける。
 子どものころに泊まった「おじいちゃん、おばあちゃんの家」は人が住んでいない寂しさが漂っていた。「皆さん、都会に出られて、空き家も増えてますよ」とタクシーの運転手。放っておくと、周囲に迷惑をかけるばかりか、いずれ「負動産」として自分にも降り掛かる。なんとか夏前に解体したい。

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