「映画看板の街」青梅に50年ぶり!映画館 文化財の洋館を改装「シネマネコ」きょうオープン

2021年6月4日 07時00分

青梅市にオープンする映画館「シネマネコ」。国登録有形文化財でもある旧都立繊維試験場をリノベーションした

 「映画看板の街」として知られ、かつては三つの映画館があった青梅市に、約50年ぶりに映画館が復活する。国登録有形文化財の木造建築「旧都立繊維試験場」を改装した「シネマネコ」だ。代表の菊池康弘さん(39)は「ここで映画が見たい、と思える場所にしたい」と意気込む。
 柔らかな水色の外壁が印象的な洋館。昭和十年ごろに建てられた貴重な建物の外観は変えず、耐震・防火工事をして映画館に作り替えた。六十三席のシアターにカフェも併設。改装前は石こうボードで隠れていた天井の木の梁(はり)を見えるようにし、エントランスの壁は下地の板をそのまま生かして、木造らしさが感じられる仕上がりになった。

受付の天井部分は古い梁がのぞく

 市民待望の映画館は当初は五月二日に上映開始の予定だったが、緊急事態宣言で延期になり、四日にオープンを迎える。
 菊池さんが青梅に映画館を作りたいと考えるようになったのは、十年ほど前。市内で飲食店の経営を始めたころだ。「昔は市内に映画館があったんだよ。また青梅で映画が見たいな」。厨房(ちゅうぼう)で焼き鳥を焼きながら、年配の客からよくこんな話を聞いた。
 古くから織物産業が盛んな青梅は、西多摩地区の中心地として栄えた。映画が「娯楽の王様」だった昭和三十年代には、「青梅大映」「青梅キネマ」「青梅セントラル劇場」の三館がしのぎを削っていた。
 だが、レジャーの多様化で五十年ほど前までにすべて閉館。JR青梅駅近くの商店街が三十年近く前から地域活性化策として、三館の看板を手掛けた職人の手描き看板を飾り、「映画看板の街」として有名になったが、映画館はなかった。

市内の映画看板。名画のネコパロディーも

映画看板のある青梅市の街並み

 俳優として活動していたこともある菊池さんは、客の話をもとに調べるうちに興味が高まった。「ぼくが青梅に映画館を作ります」。あちこちで言ってもなかなか本気にされなかったが、店の経営も軌道に乗った三年ほど前に商工会議所の関係者から今の建物を紹介され、計画が始動。織物の町では蚕をネズミから守るネコが大事にされていたと聞き、自身もネコ好きなことから名前を「シネマネコ」に決めた。
 計画が具体化すると、埼玉や群馬など各地のミニシアター関係者が力になってくれた。「チケット収入だけでは経営が厳しい」といったアドバイスを受け、経営方針を練った。イスは閉館した新潟県のミニシアターが譲ってくれた。
 四日のこけら落としの上映作品は、アニメ映画「猫の恩返し」。最初の二週間は館の名前にちなんで「猫祭り」とし、「ねことじいちゃん」「猫が教えてくれたこと」などを並べた。作品は二週間で入れ替え、一日四〜五作品を上映する。菊池さんは「今後は往年の名画や単館系の最新作など幅広い作品を公開していく」と話す。

映画館の客席と「シネマネコ」代表の菊池康弘さん

 カフェではネコの肉球模様をあしらったスイーツなどを提供する。カフェだけの利用も可。「若い世代は映画館といえばショッピングモールのシネコンのイメージが強いかもしれないが、カフェを取っ掛かりに気軽に立ち寄ってもらい、ミニシアターの良さも知ってもらえれば」
 シネマネコを作ったのは、飲食店経営を応援してくれた青梅の人たちへの恩返し。「温かく接してくれた、顔の見える身近な人たちを楽しませたい。それが広がって街全体が盛り上がれば、もっとうれしいですね」
<シネマネコ> 火曜定休。63席。緊急事態宣言を受けて当面は半数程度で営業。上映スケジュールは公式ホームページを。問い合わせは、電0428(84)2636。
 文・林朋実 写真・市川和宏
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