摂食障害で体重25キロまで…命の危機乗り越え結婚、起業「支えがあれば夢を持って生きられる」

2021年6月6日 06時00分

摂食障害でやせた足(右)と回復した時の足(左)

 拒食症や過食症の摂食障害は精神疾患の1つで、女性の10人に1人がかかるとされる。福岡県宗像市の郁美さん(28)=名前のみ公表=は5年前、体重が急激に減り、拒食症と診断された。診療機関がまだ少ない中、回復と悪化を繰り返し、命の危機にも直面した。同じ悩みの人々と交流し、病気と向き合いながら、信頼できる医師とも出会えた。昨年結婚し、今は夢だった英会話教室を開く。「完治は難しいけど、支えがあれば夢を持って生きていける」。病気の実情を知らせたいと、西日本新聞に連絡を寄せてくれた郁美さんに話を聞いた。(西日本新聞・水山真人)

◆友人ら「気持ちの問題」…理解得られず自殺未遂も

 東京出身の郁美さんは客室乗務員として福岡県で就職した。だが、初めての独り暮らしや不規則な勤務、家族の体調不良も重なり、食事が後回しに。痩せるに伴って自己肯定感が下がり、食べられなくなる悪循環に陥った。勤めるようになって1年半後の2016年、拒食症と判明した。
 44キロの体重が25キロになっていた。筋力が弱まり、緊急脱出訓練でドアが開けられず乗務停止に。心療内科や精神科を30カ所以上訪ねたが「摂食障害は扱えない」などと断られた。友人や同僚にも「病気は気持ちの問題」と理解を得られず、自殺未遂を繰り返すまで追い込まれた。

◆克服目指し心理学受講、SNSで闘病仲間と交流

 自らの力で改善しようと、大学で心理学の講義を聴講した。食事のメニューを細かく決め、1度は復職した。だが症状が再発し、不規則な勤務が一因だと自ら判断し、18年に退職した。

摂食障害の治療のために作ったメニュー表。献立や食材のグラム数を細かく決めている

 「ありのままの自分を語って、同じ境遇の人たちと病気を克服したい」
 郁美さんは会員制交流サイト(SNS)で闘病の日々をつづり始めた。同年代の女性らが「自分も拒食症では」などと尋ねてきた。闘病中に取得した上級心理カウンセラーの資格を生かし、「誰でもなりうる病気だから、心配しないで」と寄り添えるようになった。
 拒食症で障害者手帳を申請できることを知り、悩んだ末、19年に取得した。保健師を通じ紹介された精神科医は、不安な思いに耳を傾け、的確なアドバイスをくれた。

◆コロナで延期の披露宴、花嫁姿に感謝を込めたい

 この年、得意の英語を磨き、価値観を広げたいと渡米した。有名リゾート施設で働き、一時は症状がぶり返したが、19年末からは体調を維持している。

結婚式に向け写真を撮影した郁美さん=2020年11月

 新型コロナウイルスの流行で昨年4月に帰国。客室乗務員時代の友人と再会し、結婚した。夢だった英会話教室を開き、今は幼児から40代まで15人が通うまでになった。
 SNSでは同じような摂食障害に悩む人ら150人以上と交流を重ねてきた。「ともに支え合い、生きてこられた」と振り返る。
 摂食障害は無月経などの症状があり、結婚を不安視する人も多いという。「そうした人が希望を持てるようにしたい」。コロナで延期になっているが、結婚披露宴で、ドレス姿で家族に感謝を伝えるのが今の目標だ。
 その先に大きな夢も描く。カウンセラーの資格を生かし、「生きづらさを抱える人たちの居場所づくりに取り組みたい」。実現へ一歩一歩進んでいくつもりだ。

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