<くるみのおうち>(11)自分らしく生きる 息子が気づかせてくれた 「ありのまま」認め合う社会に

2021年6月6日 06時40分

くるみの目指す社会の姿を説明する太田修嗣さん(本人提供)

 「いろいろあるけど、何とかやってきた」。今年で二十歳になった息子との暮らしや、くるみの活動を振り返り、私は本当にそう実感しています。そんな中で、私たちの生活を支えてくれたものは、息子の笑顔と仲間たちの存在でした。
 彼の屈託のない笑顔は、周囲の人の気持ちを和らげ、幸せな気持ちにさせてくれます。一方で完璧主義で、思い通りにならないとイライラする時、親としてできるのは共感し、見守ることくらい。そして、親にも気持ちのはけ口や相談相手が必要なことがあり、仲間の存在がことさらにありがたく感じられます。
 このように息子と仲間のおかげで、親にならせてもらっている。私は、この子を育てることができて、本当によかったと思います。
 生産性や自己責任を問われる場面は当然ありますが、行き過ぎると、社会的に弱い立場にある人たちは生きづらさを感じます。今のコロナ禍ではなおさらです。
 誰にとっても、安心して自分らしくいられて、活躍の場と充実感が得られ、あたたかな触れ合いがある「居場所」が必要です。私はくるみの活動を通して、息子から教わったことを社会に還元していきたいし、仲間とのつながりを育てていきたいと思います。
 私たちが目指すのは「さまざまな人がまぜこぜで、一緒に活動している寛容な社会」です。「これができる、あれができない」とか評価しあうことなく、ただ「そうなんだ」と認め合うインクルーシブな社会。新たな拠点「くるみのおうち」はその一歩です。
 障害のある人を排除したり、怖い存在だと思ったりする大きな理由は、単純に触れ合う機会が少ないからです。私自身もそうでした。息子の存在が、それに気づかせてくれたのです。
 別に空気が読めなくたって、自分らしく生きられればいいじゃないか。誰からも愛される人を目指すのではなく、自分と大切な人を愛せる人になろう。そして、子どもに障害があると分かった親が、一度は落ち込んだとしても、自分は独りじゃないと感じることができる、「この子を育てることができてよかった」と感じることができる。そんな社会づくりに、どうかあなたの力をお貸しください。
 たとえば、本人の声にもっと耳を傾ける。家族の大変さを理解する努力をする。「想像力と思いやり」を社会にあふれさせる−。私たちにできること、やるべきことはたくさんあると思います。この社会を創っているのは、他ならぬ私たち自身なのだから。(太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)=終わり
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