品川の銭湯に「はだか書店」 大学生がアイデア 14日までフェア「本を手にして」

2021年6月7日 07時24分

平川克美さんの著書「『消費』をやめる」を手にする本田祐也さん。奥が脱衣所のロッカーを活用した販売台=いずれも品川区小山の東京浴場で

 品川区の銭湯「東京浴場」(小山6)で、書籍販売フェア「はだか書店」が開かれている。本との偶然の出合いを演出する工夫もあり、80冊以上売れた。フェアのきっかけは「普段、書店にいかない人にも本を手にしてほしい」という読書好きの大学生の願いだった。 (福岡範行)
 ロビーの入り口には、かつて銭湯の利用客が使っていたロッカー(十二人用)が置いてある。これが販売台で、その上には本が並ぶ。また十二個ある扉には、それぞれ「人生に迷ったら」「笑いたいときに」といった言葉が書かれた紙が貼られ、どんな本が入っているか、開けないと分からない。販売されているのは約二百三十冊。

販売台の12個の扉には、中にある本にちなんだテーマが貼られている

 フェアの発案者で、東京浴場でアルバイトをする大学四年本田祐也さん(23)は「本を見つけてもらう、っていうのをやりたかったんです」と話す。
 小学生時代、家族に読書を勧められるのが嫌で、本が「めちゃくちゃ嫌い」だった。中学生になるころ、押し入れの段ボールと壁の隙間に挟まっていた一冊の本を偶然、見つけた。周囲の助言を素直に聞く騎士が幸せをつかむ物語。「誰も知らない生き方の教訓を、自分だけに教えてもらえた」と感じ、本のとりこになった。
 「本は、価値観や常識を新しくしてくれる」と考える半面「本に興味ない人は書店に行かない。本が生活と離れている場所にある」と感じていた。
 身近な生活圏で経済を回す大切さを説く文筆家平川克美さん(70)の著書「『消費』をやめる 銭湯経済のすすめ」(ミシマ社)を読み、今回の企画を思い付いた。平川さんが経営する喫茶店「隣町珈琲(カフェ)」(品川区中延)を訪ねて協力を依頼し、ミシマ社の本を販売することになった。
 フェアは五月十二日に始まり、反響は想像以上だった。大学生が「面白そう」と手に取ってくれた。子どもは、扉を開けるのが楽しそうだった。隣町珈琲の常連客も来てくれた。
 ミシマ社の営業担当池畑索季(もとき)さん(32)は「反応は、書店でのフェアより良いぐらい。ここで本を手に取った人が書店にも行くようになったら理想的」と喜ぶ。
 東京浴場は今後、銭湯の利用客らが自分で選んだ本を自ら販売できるよう、貸し棚も作る考えだ。平川さんは「財産をみんなで使い回していく実践。財産を抱え込む資本主義への抵抗」と意義づける。一万冊持っていても読むのは一冊ずつ。それなら、みんなで楽しめばいい−。平川さんは「銭湯が、楽しい感覚を共有する場に育ってほしい」と期待した。
 フェアは十四日まで。東京浴場は火曜定休。問い合わせは、同店=電03(6421)5739=へ。

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