導入企業で効果上々! 勤務間インターバル 終業→次の始業までの休息を制度化

2021年6月7日 07時59分
 仕事を終えた後、次に働き始めるまでに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」。過労死対策の切り札とされるが、導入企業の割合は二〇二〇年一月時点で4・2%にとどまり、同年までに10%以上としていた政府の目標には届いていない。一方で、制度を取り入れている企業や施設では、時間外労働が減るなど着実に効果が上がっている。 (河野紀子)
 勤務間インターバル制度は一九九三年、欧州連合(EU)でスタート。勤務終了から次の勤務まで、最低でも連続十一時間の休息時間を義務付けるよう、加盟国に求めて広がった。時間外勤務をせざるを得なくても、心身を休ませる時間を持てるのが利点。日本では働き方改革の一環で、二〇一九年四月から、導入が企業の努力義務となった。
 日用品大手のユニ・チャーム(東京)は一七年一月から取り入れた。勤務終了から、翌朝午前八時の始業まで八時間以上の休息を就業規則に明記。十時間以上を社員の努力義務とした。さらに、午後十時以降に働くことを原則禁止に。人事部長の渡辺幸成さん(50)は「睡眠が削られると効率が上がらない。長時間労働をよしとする意識を変える必要があった」と言う。
 約千五百人の全社員が対象。毎日の勤務記録の申告時に、八時間以上のインターバルが確保できていなければ「違反」とされ、出勤時間を遅くするなどして、一週間以内に足りない分の休息を取るよう警告を受ける。罰則などはないが、社員の意識は変わり、当初は年間二百七十件だった違反は五十件ほどまで減った。
 八時間のインターバルを取っても、通勤や食事、入浴などにかける時間を差し引くと、睡眠時間は五時間程度だ。渡辺さんは「まずは違反ゼロを目指し、将来的には十時間以上を義務にしたい」と話す。
 二十四時間体制で稼働する病院で導入している事例も。聖隷三方原病院(浜松市)は一二年から、看護師六百五十人を対象に十一時間のインターバル確保をルール化した。難しかったのは、朝から夕方までの「日勤」、夕方から深夜までの「準夜勤」、深夜から朝方までの「深夜勤」の三交代制の職場だ。以前は午後五時に日勤を終えた後、日付が変わった午前零時半から深夜勤をするケースが多くあったが、これだとインターバルは七時間半。こうした勤務はできなくなった。
 変わる働き方に、当初は戸惑いもあったという。しかし、慣れるにつれ、「疲れがたまりにくい」など効果を実感する声が増えた。インターバルを確保するため残業も減少。導入時、月平均の残業時間は一人当たり一七・四時間だったが、一九年度は一一・八時間と三割減った。年間の離職率も9%から6・7%に改善した。
 インフルエンザの流行などで冬場は残業をしないと回らない場合もあるが、その分、採用を増やすといった対応を取る。総看護部長の松下君代さん(50)は「自分の健康を守ることは、患者さんへの丁寧なケアにつながる」と手応えを話す。
 ただ、厚生労働省が二〇年一月に六千四百六社を対象に実施した調査では、導入企業は回答のあった四千百九十一社の4・2%にとどまる。政府は新たに、二五年までに15%以上に引き上げる目標を設定した。
 労働安全衛生総合研究所(川崎市)の上席研究員、久保智英さん(44)は「働く時間でなく、休息時間に着目したことがインターバル制度の新しさ」と指摘。長くなるほど食事や入浴、家族との時間が増える。「睡眠の時間が確保できれば健康維持につながる。中長期的にみれば、仕事の生産性も上がる」と呼び掛ける。

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