天気予報で耳にする「平年値」って何? 10年ぶりに変わりました

2021年6月8日 07時09分
 天気予報でよく耳にする「平年値」が五月十九日、十年ぶりに更新された。新たに二〇一一〜二〇年に観測された気温や降水量などのデータを加えた、三十年間の平均値が「平年並み」となる。気象の世界では十年に一度の「大イベント」だが、そうは言ってもピンとこない。新「平年」を振り返りながら、平年値の実態を探ってみた。

◆増える猛暑日

午前中から厳しい暑さとなった昨年8月11日。渋谷のスクランブル交差点をマスク姿で行き交う人たち

 最高気温が三五度以上となった日を指す「猛暑日」の言葉が登場したのは二〇〇七年。年々真夏の暑さは厳しくなり、気象庁は一八年夏に「災害と認識している」と強い言葉で警戒を呼びかけた。
 歴代の最高気温トップ20は、一九三三年に山形で観測された四〇・八度を除いて、すべて新平年の三十年間の記録だ。新平年値では、前橋、熊谷、甲府、京都などで猛暑日が四日以上増える。
 厳しい暑さは、教育現場にも影響を与えている。運動会といえば以前は十月十日だった「体育の日」に合わせて秋開催が多かったが、近年、春開催が増えた。文科省の担当者は「熱中症を避けるため、涼しい時期から練習ができる春開催が増えたのも理由の一つではないか」と推測する。

◆警戒!短期集中豪雨

2019年10月12日、台風19号の接近にともなう強い雨に見舞われた渋谷

 新平年値では、夏の西日本と秋冬の太平洋側の多くで降水量が10%ほど増えた。近年、大きな被害を出しているのが短時間の集中豪雨。「ゲリラ豪雨」という言葉が流行語大賞のトップ10入りしたのは二〇〇八年。最近まで専門家しか使わなかった「線状降水帯」といった言葉も一般的になってきた。
 一時間降水量が五〇ミリ以上の集中豪雨を記録した回数を、気象庁の平年値と同様に計算すると、この三十年間では全国で年間二八九・六回発生。「旧平年値」の期間より三一・四回も増えた。短時間豪雨の警戒は今後も欠かせないだろう。

◆南の桜 開花遅く

平年より12日早い3月22日に満開になった靖国神社の標本木

 春の風物詩といえば桜だが、近年は「今年も桜の開花日が早まった」というニュースが定番になりつつある。新平年値でもほとんどの観測地で一〜二日早まったが、逆に鹿児島・奄美大島の名瀬、沖縄の石垣島、宮古島では遅くなった。
 いずれの島もソメイヨシノが生育しないため、標本木はヒカンザクラ。名瀬の開花日は一月二十日、石垣島は同十八日、宮古島は同十七日となり、一〜二日遅くなった。気象庁の担当者は「桜の開花には冬に一定の気温低下が必要。温暖化の傾向で冬場の気温が下がりきっていない可能性もある」と推測している。

◆梅雨入り前に「平年値」更新

 平年値は、降水量や暑さなどが、過去三十年間を平均した「いつもの年」と比べてどの程度なのかを知る手掛かり。日本は西暦の末尾が「1」になる年に気象庁が更新。五月十八日までは「一九八一〜二〇一〇年」の平均が平年値だったが、同十九日からは「九一〜二〇年」の平均となる。
 本来なら今年の一月一日から新平年値を使うべきだが、更新日は四カ月以上遅れる。全国約九百地点のアメダスや百五十七カ所の観測地点から集まる十年間のデータは膨大な量で、「年が変わればすぐ更新」とはいかないのだ。
 ならば、切りが良い「六月一日」に更新すればよさそうだが、気象庁の担当者は「梅雨の時期に入って地域ごとに『平年値』が異なると混乱する。梅雨入り前に更新するよう考慮している」と説明。前回の更新日も二〇一一年五月十八日だった。
 文・布施谷航/写真・佐藤哲紀、沢田将人、由木直子
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