焼け木で炭染め 足利、山火事からの復興願い

2021年6月9日 07時06分

両崖山の炭で染めたTシャツ。1着1着染めムラに個性がある一点物

 栃木県足利市の両崖(りょうがい)山周辺で二月に発生した山林火災に心を痛めた地元の染色業、初山亮二さん(56)が鎮火後の山中に分け入って焼け焦げの廃木を拾い集め、その炭で染めたTシャツとトートバッグを試作した。限られた炭による計二百点を六月中旬からチャリティー商品として市内で販売、浄財を市に寄付する。
 「子どものころから慣れ親しんだ両崖山。再生のために自分ができることをやる」。初山さんは、こう語る。
 昭和初期、生産量日本一を誇った絹織物の銘仙や縦編みメリヤス「トリコット」で知られる繊維の街、足利市。現在も市内製造業の三割超が繊維産業だ。
 初山さんは伝統を受け継ぐ四代目で染色加工の老舗「初山染工」を経営する。四月中旬、協力者とともに両崖山の急斜面を登り、地権者の了解を得て炭化した廃木約十キロを拾い集めた。

炭染めのTシャツとトートバッグを手に、思いを語る初山亮二さん(左)と高橋仁里さん

 炭染めには独自の技術が生きる。市内の繊維仲間と二〇一五年に結成した「足利サムライファイバープロジェクト」の活動を通じ研さんを積んで、染め方を生み出した。水に溶けない炭を高温で特殊処理し、繊維に定着させると無地の素材が自然な風合いを持つ灰色に変わる。炭なので排水も汚れず環境にも優しいという。
 今回は良質の炭ではないため、試作品は染めムラが強めに出た。だが、初山さんは「両崖山の炭でつくったことに意味がある。すべてが個性的な一点物です」と笑う。

鎮火後の4月、両崖山の斜面で炭化した廃木を拾う初山さん=いずれも栃木県足利市で

 プロジェクトの仲間で協力者の高橋仁里(きみさと)さん(45)=ガチャマンラボ=は「培ってきた地元の技術が山再生につながれば」と期待する。
 チャリティー商品は、足利産極細綿糸素材のTシャツが三千八百円、トートバッグが千五百円の予定で、各百点。六月十五日ごろから同市田中町の栃木県南地域地場産業振興センターなどで販売。必要コストを除く全収益を足利市に寄付し、山の再生に役立ててもらう。問い合わせは初山さん=電0284(71)2239=へ。

◆世界にはばたく 繊維の街のサムライ

 初山さんが今回、炭染め技術の確立に活用した足利サムライファイバープロジェクト。正式名は「足利ファイバーテクノロジープロジェクト」という。
 2015年に足利市内の縫製、染色、裁断など繊維関連有志事業所11社(のちに18社)で結成。国の地方創生推進交付金を活用し、グローバル市場に通用する商品開発や技術研さん、足利ブランドのPRを行っている。
 16年にはファッションの街フランス・パリで染め物や生地を持ち寄って展示会を開催。初山さんの炭染めは落ち着いた風合いに消臭抗菌効果もあり、高い評価を得た。
<足利山林火災> 2月21日、足利市西宮町の両崖山(251メートル)山頂付近から出火。23日間燃え続け、東京ドーム35個分に相当する約167ヘクタールを焼失した。延焼地が住宅街に近く、一時は市内305世帯に避難勧告が発令され、近くの中学、高校が休校した。森林の被害額は約3200万円(栃木県試算)。

今年2月、足利市の山林で発生した火災(本社ヘリ「おおづる」から)

 文・梅村武史/写真・梅村武史、伊藤遼
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