あなただけの成人式 大田のボランティアが記念撮影 施設で育った23歳女性「号泣しそう」

2021年6月9日 07時15分

晴れ着を着て記念撮影に応じる女性(手前)=大田区で

 生活に困窮するなどして成人式の出席をあきらめていた児童養護施設出身者のため、ボランティアで晴れ着での記念撮影を請け負っているグループが大田区にある。8日、区内の古民家に23歳の女性を招き「あなただけの成人式」を開いた。 (宮本隆康)
 このグループは、区内の女性を中心に十二人のメンバーでつくる「イチゴイニシアチブ」。代表の市ケ坪さゆりさんがファッション業界で働いてきた経験を生かし児童養護施設で暮らす子どもの七五三、施設出身者の成人を祝う活動を二〇一〇年から続けている。
 活動のきっかけは、〇八年の秋葉原の無差別殺傷事件に衝撃を受けたことだったという。事件を受けて「疎外されて生きる人」たちのことを「社会をつくる自分たちの問題」として考えた。その中で、さまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもたちに思いを巡らせた。区内の児童養護施設を訪ね「喜びや楽しみをつくる」活動を始めた。
 晴れ着を用意し、仕事で知り合ったカメラマンや美容師の知人らとともに、都内や神奈川県内の施設へ通う。これまで、毎年三十人ほどのお祝いをしてきた。
 この日は、池上本門寺の近くの古民家カフェ「蓮月(れんげつ)」が会場を提供してくれた。撮影に臨んだ二十三歳の女性とは知人の紹介で知り合った。女性は親の虐待が理由で五歳のとき、児童養護施設に入った。十八歳で施設を出て、企業に就職。生きるのに精いっぱいで晴れ着を借りる余裕はなく、成人式に出られなかった。
 美容師からメイクをしてもらい、庭園でプロのカメラマンから写真を撮ってもらった。見守る人たちから「かわいい」と声をかけられるたびに、輝く笑顔を見せた。
 女性は、子どもの時の写真がほとんどないという。施設でのお祝いは、いつもほかの子どもたちと一緒だった。「自分のためだけにいろいろな人が集まってお祝いしてくれたのは、生まれて初めてのことです。家に帰ったら号泣してしまいそう」と感激した様子で話した。

関連キーワード

PR情報