菅首相、初の党首討論「あの瞬間忘れられない」…論点かわし五輪の思い出 「真剣さに欠ける」批判も

2021年6月10日 06時00分
 菅義偉首相が野党4党と初めて行った9日の党首討論。話題はコロナ対策と東京五輪・パラリンピックの開催判断に集中したが、首相は対策の不備やコロナ禍での開催意義について直接答えず、論点をずらす姿勢に終始した。45分間という限られた時間の中で、野党側も首相のガードを崩すことはできず、国民の疑問は解けなかった。(上野実輝彦、清水俊介)

党首討論に臨む菅首相(左手前)と立憲民主党の枝野代表㊨=9日午後、国会で(小平哲章撮影)

◆怒りを込めて問い直すも…

 「答えていない。聞きたいのは、命をリスクにさらしてまで五輪を開催する理由だ」。共産党の志位和夫委員長は、怒気を強めて首相に問い直した。
 五輪を開催すれば観客の移動や関連イベントで、全国的に人の流れが増える。必然的に感染拡大の恐れは高まる。志位氏はこう指摘し、それでも五輪を開く理由をただしたが、首相が「(関連イベントなどを)全て行うかどうか決まっていない」とかわしたからだ。
 首相は再質問にも「国民の命と安全を守れなくなったら(五輪を)やれないのは当然だ」と論点をずらした。

◆1964年の思い出で応戦

 立憲民主党の枝野幸男代表との討論でも、正面から答えようとする姿勢は見られなかった。
 4都県に発令していた緊急事態宣言を3月に解除した後、1カ月後に再び発令せざるを得なかったことから、枝野氏は「解除が早すぎた」と反省を迫った。首相は「ロックダウン(都市封鎖)という厳しい措置を行った国でも収束できなかった」と論点をすり替え、ワクチン接種が進みつつある成果の誇示を始めた。
 枝野氏は、五輪に関して首相が言う「国民の命と安全を守る」に全国的な感染拡大防止も含まれるのかを確認したが、首相は唐突に立民が掲げる「ゼロコロナ」を持ち出し、実現性を疑問視。さらに1964年の東京五輪に話題を移し「東洋の魔女」と呼ばれたバレーボール女子の日本代表の活躍などを延々と話し「あの瞬間を忘れられなかった」などと情に訴えかけるような発言を続けた。

◆五輪開催へ自民からも注文

 テーマが五輪に集中するのは、国民が開いて大丈夫かという心配と疑念を強めていることの裏返しだ。だが、この日も首相は正面から向き合わず、むしろ楽観的な雰囲気さえ漂わせた。用意したメモを棒読みする場面も目立った。
 五輪取材の報道関係者の行動を管理する衛星利用測位システム(GPS)に関し、国民民主党の玉木雄一郎代表は実効性に疑問を呈したが、首相は「大丈夫だと聞いている。もう一度確認する」と答えただけ。
 枝野氏は討論後に「ゼロ回答だった。真剣さに欠ける」と首相を批判したが、30分の持ち時間で追及より自らの政権構想などの主張を重視したためか、質問は4回のみだった。
 首相は討論後、記者団に「国民の皆さんが最も関心があるだろうコロナ対策、五輪について私の考え方を丁寧に説明できた。これからもしっかり説明していきたい」と自画自賛したが、自民党幹部からは注文も付いた。下村博文政調会長は記者会見で、政府がコロナ禍で五輪開催を判断する数値基準を示していないことに「専門家からいろいろな提案がされてくると思う。(開幕)1カ月前、(それに重なる宣言期限の)6月20日に、どのレベルであれば国民の命と健康を守れるのかを目安として出すべきだ」と求めた。

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