<社説>党首討論 疑問に答えぬ不誠実

2021年6月10日 07時23分
 菅義偉首相=写真=にとって初の党首討論が行われた。安倍政権当時の二〇一九年六月以来二年ぶりの開催。新型コロナウイルス感染症対策や東京五輪・パラリンピック開催の是非が論点だったが、首相は野党側の質問に正面から答えようとせず、国民の疑問と誠実に向き合ったとは言い難い。
 立憲民主党の枝野幸男代表は、政府のコロナ対策について「第五波を防ぐためにも三月の(緊急事態宣言)解除が早すぎたという反省に立って、厳しい基準を明確にすべきだ」と問いただした。
 首相は「ロックダウン(都市封鎖)した国でも収まっていない。ワクチン接種こそが切り札だ」として、十一月までに希望者全員への接種を終えると強調した。
 ワクチン接種の重要性は理解するが、危機感を欠き、後手と批判されたこれまでの政府対応が、感染拡大や長期化につながったことへの反省が決定的に足りない。
 枝野氏は「五輪開催を契機に感染が拡大するのではないか」として五輪に関する見解もただした。
 しかし、首相は五十七年前の前回東京大会当時、自身は高校生だったとして「東洋の魔女」「マラソンのアベベ選手」など思い出話を列挙して、「すばらしい大会を子供や若者に見てもらい、希望や勇気を伝えたい」と語った。
 国民が知りたいのは五輪開催が命と暮らしを脅かすことはないのかだ。思い出話に約五分間も費やし、議場がざわつく場面もあるなど、首相が疑問に正面から答えないのは不誠実極まりない。
 党首討論は政権交代可能な二大政党制を目指して二〇〇〇年から正式に導入されたが、形骸化も指摘され、開催機会が減ってきた。
 討論時間は四十五分。今回、枝野氏の持ち時間は三十分だったがほかの三党首は各五分と短い。議席数に応じた長さだが、これでは突っ込んだ議論は難しい。
 党首討論は国民の関心が高い政策課題や政治理念について党首同士が議論を深める貴重な機会だ。
 全体の時間を延ばしたり、野党が協力して割当時間を融通し合うなど、実質的な議論ができるよう与野党が知恵を絞る必要がある。

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