コロナ禍で常態化する小池知事の「専決処分」 議会審議は後回し…薄れた都議会のチェック機能

2021年6月11日 06時00分
<検証都議会2021㊤>

7日の採決、知事の専決処分は起立多数で承認された=東京都議会議事堂で

 「起立多数と認めます」。東京都議会の本会議場に石川良一議長の声が響いた。定例会最終日の7日、議会は総額1兆円を超える新型コロナウイルス対策の補正予算を認めた。議会の議決を経ずに知事が決定する「専決処分」を経ての事後承認だった。

▽専決処分 首長が、議会の議決なしに予算編成や条例制定を行う手法。緊急時や案件が軽微な場合の手段として、地方自治法で定められている。緊急時の専決処分には、事後の承認が必要となる。過去には、首長が議会を開かず専決処分を乱発した事例が問題化。2012年の自治法改正で、議会側も議長が臨時会を招集できるようになった。コロナ関連の臨時会は、都議会の2回に対して神奈川県議会が5回、埼玉県議会が6回開催。両県は都議会が設置していない常設の特別委員会も設けている。

 コロナ禍の都議会では専決処分が常態化している。都は昨年以来、新型コロナ関連で20回も繰り返してきた。回数もさることながら、都の一般会計当初予算7兆4000億円の14%に相当する1兆円もの補正予算が、議会審議を経ずに決定されるのも異例だ。
 都側は「議会を招集する時間的余裕がないため」と説明する。確かに、緊急事態宣言に伴い国の財源を活用する協力金の補正予算など、急を要するものが多いが、中には緊急性を疑問視されたものもある。
 昨年7月、飲食店などの事業者に「感染防止徹底宣言ステッカー」の掲示を努力義務とするコロナ関連条例改正を、知事は専決処分した。当時、複数の会派から「議会軽視だ」「審議を避けたかったのではないか」と不満が漏れた。

◆臨時会 コロナ関連は2回のみ

 「せめて専決処分の直後に、臨時会を開くべきだ」。共産など一部会派は、議長に臨時会の招集を求めてきたが大勢にはならなかった。これまでコロナ関連の臨時会は昨年4月と7月の2回のみ。隣県と比べても消極姿勢が目立っている。
 「議会はなるべく効率的な方がいい。(専決処分で)決まったものは、次の定例会で承認すればいいのではないか」
 議会運営委員長で、都議会最大会派の都民ファーストの会の増子博樹幹事長は語る。コロナ対策の中、業務が増えている都側の負担にも触れ、「今のやり方がベストだ」と言う。
 各会派の代表者が都側から説明を受ける「調整会議」が審議の代わりの役割を果たしているというが、この会議は非公開。しかも、関係者によると十分に質疑する時間はなく、議事録もない。

◆自民も接近「与党だらけ」

 議会対応にもかかわる都職員は、今の都議会は「与党だらけだ」と指摘する。
 4年前、都議会は小池百合子知事の率いる都民ファーストの会が第1会派となり「知事と議会の一体化」が懸念された。都民ファとともに知事を支えてきた公明に加え、昨夏の知事選を経て、自民も小池氏に接近している。
 オール与党化は執行部側にとってはやりやすい。都幹部は「今、こちらの提出案件はスムーズに通る。言いがかりをつけられることも少ない」と話す。一方で議会のチェック機能は、見えにくくなっている。
 大杉覚・東京都立大法学部教授(行政学)は「新型コロナの影響で、全国の自治体で専決処分が増える中でも、東京都の多さは際立っている。特に昨年7月の条例改正は、議決を経るべきだった」と疑問視。「都議会として、臨時会なども開かず、都の姿勢を認めるのは自らの存在理由を否定しているようなものだ。非常時だからこそ、行政が暴走しないか、厳正なチェック機能の行使が求められる」と指摘している。
 ◇
 任期満了に伴う東京都議選(7月4日投開票)は25日、告示される。この4年、都議会は都政課題にどう向き合ったのか。象徴的な出来事から検証する。

PR情報