プロレスグッズ一筋20年 世界最強への道

2021年6月11日 07時02分

タイガーマスクが並ぶ闘道館の店内と泉高志館長=いずれも豊島区で

 華麗なプロレス技で魅了した初代タイガーマスク登場から40年の今年、陰でもう一つ、マニアの「交差点」が節目の年を迎えた。プロレスグッズ買い取り販売「闘道(とうどう)館」(豊島区)の創業20周年。愛好家が惜しみつつ手放した品々に心躍るが、売買にまつわる店主の「武勇伝」もワクワクするエピソードが満載だ。

20周年を迎えたプロレス用品店「闘道館」

 「世界最強の品ぞろえ」。JR巣鴨駅から徒歩一分。駅のホームからも目に入る店の大きな看板には、そんなキャッチフレーズがある。
 ビル一、二階計四百平方メートルの店内には襲いかかってきそうな迫力ある覆面や雑誌、ビデオテープ、パンフレット、サイン色紙などプロレス・格闘技・武道の専門グッズがそろう。イベントや記者会見場にもなる店で、格闘家のボブ・サップさん、ピーター・アーツさんが訪れたこともある。

天龍源一郎さんの日本デビュー戦のジャケット

 「今あるお宝の一つは、こちらです」。店主の泉高志館長(45)が案内してくれた。ガラスケースの中には「TENRYU」と刻まれたジャンパー。天龍源一郎さんが一九七七年の国内デビュー時に着ていた物で、雑誌の抽選で当たった人が先月持ち込んできたという。お値段は八十八万円。

ミル・マスカラスさんの来日時に使用したマスク。二重構造でファンの間でも評判が高いという

 アントニオ猪木前参院議員のガウン、ミル・マスカラスさんの口元を開けた日本仕様マスクなどは百万円以上のお宝。力道山さんの結婚式の引き出物もある。

力道山さんの結婚式で配られた引き出物の宝石箱

 年間十万点ほどを扱う泉さんは、レスラー本人に会うことも多い。「忘れられない」と振り返るのは十年前、ジャイアント馬場さんのライバルとして人気だった悪役アブドーラ・ザ・ブッチャーさんへの出張買い取りだ。
 日本側の関係者から「本人がコスチュームを売りたがっている」と連絡が入り、都内のホテルへ。シューズや凶器のフォークなどたくさんあり、「まとめて全部買います」と伝えると「ノー、ノー、一個ずつだ」と金に厳格だった。一つずつ高値から下げていく交渉は日付が変わるまで続いたという。
 最後にサインを求めると五千円を請求されたが、フォークでおでこを刺すよう求められ、リング上さながらの流血を色紙に塗り付ける出血大サービスをしてくれた。

都内のホテルでの出張買い取りで自身の血を色紙に塗ってくれたブッチャーさん(泉さん提供)

 無敵を誇った初代タイガーマスクが小林邦昭さんとの激闘で引き裂かれた実物のマスクが持ち込まれた時はしびれたという。数日かけて破れ方や位置を照合。裏地に激闘を物語る血のりも確認した。「本物だ」。現金数百万円を手に売り主を訪問。初代タイガーの身の回りの世話をしていた男性が売り主だった。
 幼いころからプロレス好き。早稲田大では公認の総合格闘技サークル主将も務めた。「好きなことで起業したい」と大手企業を一年で辞め、二〇〇一年三月、後楽園ホール最寄りの水道橋駅近くのビルにプロレス図書館として開業した。
 プロレス雑誌や書籍の漫画喫茶のような店だったが、副業の買い取り販売にマスクを持ち込む人がおり、ニーズもあった。価値の見分け方を教えてもらい、古書とも照合するうちに目利きに成長。テレビ東京「開運! なんでも鑑定団」に鑑定人として出演すると、著名人の持ち込みも増え、買い取り販売に一本化した。
 「さまざまな理由で行き場がなくなったコレクションを一度引き受け、本当に欲しい人に届ける。プロレス、格闘技ファンの交差点となって次世代に残し、格闘文化を継承する。自分の役割はこれだったなあと」
 三年前に二度目の移転先として構えた現在の店を見渡しながら二十年を振り返った泉さん。十五日放送の「鑑定団」でもお宝を鑑定する予定で、これからも交差点であり続けていく。
 文・井上靖史/写真・伊藤遼
 
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