<村田諒太の見習い日記>エンタメと伝統の境界

2021年6月11日 13時33分
 昨今、ボクシングとエンターテインメントの境界線はどこにあるのかと考えることがあります。

村田諒太

 ボクシングはエンターテインメントでありながらも、やはり命の危険があるスポーツであり、神聖なものとまでは言わないですが、オリンピック競技でもあり、エンターテインメントだけの要素ではダメだと感じております。
 例えば、海外でもよくあるドーピング問題。オリンピック競技のアマチュアなら数年単位での出場停止になりますが、プロボクシングの世界で、お金を稼ぐ選手に対しては半年で出場許可されるなど、穏便に済ます傾向が見受けられます。
 また、最近ではYouTuber(ユーチューバー)との試合や、他格闘技との試合が、世界タイトルよりも注目されることがあります。そこにお金が生み出されることで、安全性や実績がない興行を看過している部分も多く、これではただのエンターテインメントで、ボクシングが守ってきた「伝統」というものがつぶれてしまいます。
 流れに乗ってしまえば、さまざまな格闘技団体が生まれては消えてきたこの数十年のように、ボクシングも消えてしまうのではないかと危惧しております。
 私が大学生の頃のアマチュアボクシング界は、プロとの断絶、教育の一環としてのボクシングというスタンスがあり、ひどい判定なんかもありましたが、競技団体のトップとしての方針は明確で、それに賛同し、師としてついていく先生方も多数おられました。あの方針が良かったのか悪かったかは別として、組織のトップが方向性を持ち、リーダーシップを発揮していくことは必要ではないでしょうか。
 現在、エンターテインメントも多様化し、一昔前のテレビ一色という時代は様変わりしてしまいました。
 そういった時代だからこそ、その流れを組み込んで新しい風を吹かせるのか、もしくは他の格闘技団体やユーチューバーとのエキシビションマッチなどとは一線を画して「ボクシング」としてのアイデンティティーを保っていくのかなど、トップに立つ人たちが熟慮して考えてほしいものです。
 そんな中で、国内におけるドーピング検査すら、まともに行えない現状に改めて危惧と憤りを感じております。 (ボクシングWBA世界ミドル級スーパーチャンピオン)

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