【解説】伝統どこへ…熟議を欠いた憲法論議 改正国民投票法が成立

2021年6月11日 20時33分
憲法改正の手続きを定める改正国民投票法が賛成多数で可決、成立した参院本会議

憲法改正の手続きを定める改正国民投票法が賛成多数で可決、成立した参院本会議

 改正国民投票法は、国会提出から3年を経て成立に至った。公選法の規定にそろえる改正であり、与党からは「もっと早く成立できた」との不満も漏れる。だが、そもそも膠着(こうちゃく)した原因は自民党にある。
 国会での憲法論議は、少数会派にも質疑時間を平等に配分するなど協調を重視し、熟議による合意形成を図ってきた伝統がある。憲法は国家の基本法であり「全て『国民のもの』であるという憲法論議の基本理念」(森英介・元衆院憲法審査会長)があるからだ。
 この伝統を壊したのが自民党前総裁の安倍晋三前首相。在任中の2017年、「20年を新しい憲法が施行される年にしたい」と、期限を区切った改憲を掲げ、同党は18年、自衛隊明記など4項目の条文案をまとめた。その直後に提出されたのが国民投票法改正案。首相主導の改憲に反対する立憲民主党などの野党は「改憲の呼び水」と警戒し、昨年の臨時国会まで法案の実質審議を拒んできた。
 菅政権の発足で、立民は「安倍改憲に反対」との理屈を立てにくくなり、改憲論議に前向きな国民民主党との選挙での共闘も見据え、付則の修正で折り合った。だが、かえって投票環境が悪化する懸念や、「コロナ禍の今、急いで成立させる必要があるのか」との疑問は消えていない。
 2日の参院憲法審では、自民党推薦の参考人・上田健介近畿大教授も「熟議になっていない」と苦言を呈した。今後の憲法論議は「原点」に戻り、熟議を尽くすべきだ。(川田篤志)

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