職員から「中止」求める声も…顔が見えない五輪組織委、森氏の辞任後も変わらず<取材ファイル>

2021年6月12日 06時00分
東京2020組織委員会理事会の開始前に言葉を交わす橋本聖子会長(右)と武藤敏郎事務総長

東京2020組織委員会理事会の開始前に言葉を交わす橋本聖子会長(右)と武藤敏郎事務総長

  • 東京2020組織委員会理事会の開始前に言葉を交わす橋本聖子会長(右)と武藤敏郎事務総長
  • 東京大会の開催前最後となった東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事会=8日、東京都中央区で
 森喜朗前会長の女性蔑視発言をきっかけに、女性理事を増やして3月に再スタートを切った東京五輪・パラリンピック大会組織委員会。大会前最後となる理事会が今月8日に都内で開かれたが、これまで同様、この日もほとんどの理事が報道陣の前に姿を見せなかった。国民の関心事である五輪開催の是非や意義について率直な意見を期待したが、肩透かしを食らった。(原田遼)
 終了後、理事を代表して武藤敏郎事務総長が記者会見した。「中止や再延期に言及する意見はあったか」という質問に、「意見は全くでなかった。理事会は開催の可否を議論する場でない。開催を前提にどのように運営するのが適切かを議論する場」と、いつものように淡々と答えた。
 会合には45人の理事のうち、オンラインも含めて40人が参加。武藤氏によると「観客上限の見通しは」「メディアはワクチンを打つのか」などの質問は出たというが、非公開なため各理事の発言を直接知ることはできない。
 そこで記者たちはいつも会場の外で待つのだが、ほとんどの理事は報道陣が待つ正面玄関ではなく、記者は立ち入れない地下駐車場から帰る。質問を避けたいのだろうか。
 理事会の存在感は以前から薄かった。これまで会合は年に4回。2月に女性蔑視発言で森前会長が退任するまでは「事実上、森さんへの報告会。シャンシャンで終わっていた」と組織委関係者は明かす。
 橋本聖子新会長は理事の女性比率を引き上げるため女性を12人増やして19人とした。ジェンダー平等の勉強会を開くなど会合も3月以降、5回を重ねた。ただ、中身は以前と同様、見えない。

◆知りたかった「開催の意義」

 8日の会合終了後、ロビーのベンチに1人で座っていると、理事の芳賀美津枝さん(67)に出くわした。アイヌ民族文化を広める「登別アシリの会」の代表で、新理事の1人だ。
 芳賀さんは、理事会が開催の可否を話す場でないという点では武藤氏と同じだったが、「今の状況で開催するのは大変」と素直に語った。理事会の感想を聞くと「会議はコロナのことばかり。民族問題について意見を言えなかったわ」とも。民族や人種による差別撤廃は開催意義の一つ。少しの会話でも、大会のあり方を考える参考になった。
 組織委は定款で目的を「大会の準備と運営に関する事業を行い、大会を成功させる」としており、中止の是非は判断できないとの主張を繰り返す。
 原則はそうだとしても、組織委はコロナ対策を練り上げ、都や政府より実態を把握している。取材では「コロナを抑えるのは無理。中止してほしい」という職員の声も聞く。そうした意見を理事会で吸い上げて議論したり、リスクを都などに進言したりすることはできるはずだ。
 政治家、財界人、元五輪選手、芸能人…。理事会は多様な分野から集まり、それぞれの立場で問題意識を持っているはず。五輪が感染拡大につながらないのか、それでも開催する意義とは何か。国民がよく分からないからこそ、それぞれの考えを知りたかった。

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