<社説>改正国民投票法 問題点が置き去りだ

2021年6月12日 06時44分
 憲法改正の是非を問うための手続きを定める改正国民投票法が成立した。広告規制や運動資金などの問題点は今後検討し、施行三年後をめどに法制上の措置などを講じるとされたが、最低投票率の問題を含め懸念は残されたままだ。
 改正法は、駅や商業施設などに共通投票所を設置したり、期日前投票の時間を柔軟に設定できるようにするなど、国政選挙と同様の投票環境を整備する内容だ。
 それ自体は特に警戒を要するものではないのかもしれない。
 ただ、自衛隊の明記、高等教育の無償化、緊急事態条項の創設、参院選挙区の合区解消という改憲四項目を掲げる自民党は、改憲推進の姿勢をなお崩していない。
 党総裁でもある菅義偉首相は十日、改憲派集会に寄せたメッセージで「改憲の機運が確実に高まっている今だからこそ実現に向けて進んでいきたい」と訴えている。
 自民党が国民投票法の改正を進めた背景には、次の衆院選や来年の参院選で支持層に改憲推進の姿勢をアピールする狙いがある。
 当初、改正法審議に慎重だった立憲民主党が賛成に回ったのは同党の修正要求を自民党側が受け入れたため、広告規制などを検討する三年間は改憲論議に入ることはないとの見通しがあるのだろう。
 ただ、法制上の措置が必ず実現する確約があるわけではない。
 現行法では、テレビやラジオなどの広告放送は投票前の十四日間を除いて規制がなく、いくら資金を投入してもよい仕組みになっている。現状では、資金力が投票行動を大きく左右しかねない。法制定時には想定されていなかったインターネットの利用や広告をどう取り扱うかも、重要な問題だ。
 今回の付則では検討対象とされていないが、最低投票率も放置できない問題だ。国会が発議した改憲案は国民投票の過半数の賛成で成立するが、投票率が低ければ、少数の国民によって改憲が実現することになるからだ。
 最低投票率も今後、広告規制などと併せて検討すべきだろう。
 こうした数々の問題を検討し、法制上の措置を講じることは改憲の是非を問う国民投票を公平・公正に行うために必要不可欠だ。
 こうした問題が解消されない限り、改憲論議を強引に進めることがあってはならない。法改正したからといって改憲発議の環境が整ったと考えるのは早計である。

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