公表後も「オレはオレ」 『認知症になった蛭子さん』 漫画家、タレント・蛭子能収(えびす・よしかずさん)(73) 

2021年6月13日 07時00分
 昨年七月、テレビ東京系の健康バラエティー番組で、アルツハイマー型とレビー小体型を併発している認知症だと診断された様子が放送され、反響を呼んだ。「そんなに大ごととは考えていなかったが、周りが騒ぐのでまずいのかなと思うようになった」と話す。
 本書は、週刊誌『女性自身』(光文社)で続ける人生相談コーナーの書籍化に当たり、認知症についての本人や周囲の人の告白もまとめたもの。
 「オレの周囲の空気がなんか変わったような気がします」。冒頭で吐露したのは、認知症公表後に感じる違和感。以前は空気を読まない言動が面白いと言われ、皆が笑ってくれることがうれしかったが、公表後はあまり笑ってくれなくなった気がして寂しいという。
 二〇一四年に「軽度認知障害」と診断されていて、症状は徐々に進行。認知症を公表したのは、大好きな妻・悠加(ゆか)さんの負担を少しでも減らすため。小さい頃からお金に固執していたが、最近は稼いでいないと家族がバラバラになると思う。「認知症になったとしても、そうでなくてもオレはオレ」と、今後も稼ぎ続けたい気持ちは強い。
 一方、「悠加さんの告白」では、一七年に異変に気付き、「夜間頻尿」の付き添いでほとんど眠れない日々が続くなど過酷で孤独な介護の実態が明かされる。「病気を売り物にするなんて」との批判も覚悟で公表に踏み切った厳しい現実。ショートステイやデイサービスの利用で、ようやく眠れ、心に余裕も生まれた。「ありがとう」。夫から今まで聞いたことがなかった感謝の言葉が伝えられるようになったことには「これほどうれしいものはありません」。
 大好きだった競艇への興味も薄れるなど変化はさまざまなところに表れてきた。収録されている「人生最後のギャンブル」密着ドキュメントでは、あっさり「競艇引退」を撤回。取材時も好きな選手を尋ねると、「最近では毒島誠と桐生順平。昔なら今村豊(引退)や西田靖」と次々と名を挙げたが、コロナ禍もあって今は本当にやめている。
 最近の気晴らしは自宅近くの公園で、子どもたちが遊ぶのを見ること。「やっぱり、お金がないのが大きいと思う。この本が売れればいいので、ぜひ読んでください」。少し照れて呼び掛ける表情は、以前と変わらない、まさにえびす顔だった。光文社・一三二〇円。 (清水祐樹)

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