<新型コロナ>外出困難な高齢者へのワクチン 訪問接種に医師ら奔走 「1瓶使い切る日程調整が大変」

2021年6月12日 07時34分

車いすで生活する男性宅を訪れ、新型コロナワクチンを打つ小田院長=千葉市で

 高齢者向けの新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、持病や障害を理由に外出が困難な人の接種が課題になっている。訪問医療を行う医師が個別に接種するケースが多いとみられるが、医療機関にとって制約の多いワクチン接種と一般診療の両立は負担が大きい。政府が高齢者の接種完了の目標とする七月末が近づく中、自治体や医療機関は対応に苦慮している。 (太田理英子)
 「本来は左腕なんですけど、まひがあるので右腕に打ちますね」。七日夕、千葉市内の住宅で、「菫(すみれ)ホームクリニック」(同市中央区)の小田行一郎(こういちろう)院長(62)が車いすに乗った男性(80)に声を掛けた。女性看護師が保冷バッグから取り出した注射器を受け取ると、素早く男性の腕に打った。
 男性は左半身にまひがあり、長年車いす生活を送る。通院も困難になり、四月から同クリニックの訪問診療を受けている。当初は接種しない予定だったが、男性は「同居する子どもや孫がいるから」と接種を決めた。男性の妻(72)は「集団接種を考えたけど、玄関の階段で車いすを昇り降りさせるだけで大変。家でできてありがたい」と話した。
 認知症やパーキンソン病などで外出困難な患者と高齢者施設の訪問診療を行う同クリニックは五月下旬から、かかりつけ患者への新型コロナワクチンの訪問接種を始めた。家族の説得やデイサービスなどでの感染予防を理由に接種を希望する人は多く、接種予定者は在宅の十一人と施設入所者ら三百人弱を見込む。小田院長は「日ごろから診察しているからこそその人の体調が良くわかる」と語る。
 一方で、従来のインフルエンザワクチンの接種と異なり「接種が二回ある上、一バイアル(瓶)で六回分を使い切るため、六の倍数の人数で日程調整するのが大変」と明かす。
 七日は男性宅のほか、看護師ら二人と八施設を巡回して計二十四人に接種。在宅患者には一人暮らしの人もおり、接種後の経過観察を長めにすることが多い。通常診療の合間だけで進めることは難しく、休診日の土日に接種を行うことも。小田院長は「効率だけを考えるなら、医師一人で回るよりもどこかに患者を集めて接種した方がいいのだろうが…」とため息をつく。
 千葉市の高齢者人口は約二十六万人。市は会場を増設した集団接種などの対応に追われ、訪問接種が必要なケースは「訪問診療をやっている医師に可能な範囲でお願いしているが、まだ実態を把握できていない」と言う。今後の方針は協議中だが「国の指針もなく、余剰ワクチンの防止や人手確保など課題は多い」。
 一方、佐倉市では寝たきりの高齢者から接種を希望する声が寄せられたため、地元医師らの協力で、七月から訪問接種に乗り出す。実施日は検討中だが、市担当者は「希望者全員の接種が市の目標。動けない人を取りこぼしてはならない」と、予約受け付けに向けた対応を急いでいる。

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