真 東京03探検隊 インターメディアテク  多様な価値を秘めた “学術標本”とは? そのミステリアスな魅力に迫る!

2021年6月23日 12時02分

お笑いトリオ“東京03”が、大人の好奇心を満たすディープな世界に飛び込む!

お笑いトリオ「東京03」のメンバーが、これまで知らなかった未知なる世界に足を踏み入れ、さまざまな新発見と出合う人気の連載。
考古学、芸術、科学、サブカルなど、あらゆる分野に触れて見聞を広め、“デキる大人”としてのたしなみを磨きます!
今回のテーマは、大学の教育研究の場において欠かせない「学術標本」。言葉だけ聞くと少しお堅いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実は学術標本には貴重なお宝が目白押し! 学生の教育や研究の対象として、知的好奇心と探求心のままに世界中から集められた品々はどれも独特で、美術品とはまた違ったミステリアスな雰囲気を放っています。一見すると“これってナニ?”といった摩訶不思議なものにも思わぬ価値があったり、また、時代を経ることで価値が一変したものも。普段はあまりお目にかかる機会のない、学術標本というモノの存在と魅力について、東京03探検隊の3人が迫ります!

今回の取材の裏側をこちらの動画でご覧いただけます。これからも「真東京03探検隊」取材の様子をご覧になりたい方は、ぜひYouTube『東京新聞チャンネル』に登録してください!

いざ、東大のお宝が一堂に会すアカデミックなミュージアムへ!

3人がやってきたのは、東京大学総合研究博物館と日本郵便株式会社が協営するユニークなミュージアム「インターメディアテク」。なんとここには、東京大学が明治10年の開学以来、140年以上の歴史の中で蓄積してきた貴重な標本や研究資料が展示されているのだとか。
入ってすぐの広間(ホワイエ)で待ってくれていたのは、東京大学総合研究博物館の特任准教授、松原始先生。今回の案内人です。
飯塚隊員「よろしくお願いします! さっそくなんですけど、ここには東京大学のどういったものが展示されているんですか?」
松原先生
「大学の昔からのコレクションや教育研究の現場で使用してきたものなど、学術標本が中心です。あとは、100年前の教材とか、古い器具とか」
飯塚隊員「学術標本、とは?」
松原先生
「大学が教育や研究のために収集したり、作り出してきたもの全般のことですね」
角田隊員「つまり、東大の歴史のなかで蓄積されたものが、とにかくなんでもいろいろある、ということですか」
松原先生
「はい。私でもよく分からないものもあるくらいですから(笑)」
さっそくフシギな物体を発見した隊員たち。
飯塚隊員「これは…何なんでしょう。全く分かりませんが(笑)」
松原先生
「えーと、高圧放電実験装置の一部、だったかな。 放電の実験を行うための装置ですね」
豊本隊員「これも実際に大学で使われていたんですか?」
松原先生
「はい。工学部の13号館で使用されていたそうです」
角田隊員「触っても大丈夫?」
松原先生
「いいですよ、全然。ひょっとしたら少しビリビリするかもしれませんけど」

恐る恐る、物体のあいだに手を入れる角田隊員
角田隊員「あーー!!すごい!すごい! 髪の毛逆立ってるっしょ!?」
飯塚隊員「いや、まったく(笑)」
角田隊員「あ、そうですか」
飯塚隊員「うん(笑)嘘はよくないよね」

さらに広間の壁には、こんな巨大な骨格標本も!! 太古の時代を思わせるその姿は考古学ロマンたっぷりです。
松原先生
「“マチカネワニ”という、かつて日本に存在していた巨大ワニのレプリカ標本です」
角田隊員「で、でか!!こんなのがいたの?」
豊本隊員「恐竜時代とかですか?」
松原先生
「いや、50万年前くらいなので、わりと最近」
飯塚隊員「ご、ごじゅうまん…。50万年前ってわりと最近のことになるんですね(笑)」

飯塚隊員「この装置みたいなものは? いくつか並んでますけど」
豊本隊員「ここになんか書いてあるよ。“電気工学器具”だって」
松原先生
「電気工学教室から出てきた“なにか”ですね(笑)」
飯塚隊員「ざっくりしてますねー(笑)」
松原先生
「年代も明らかになっていないんですよ。ただ、器具などは使わなくなったら普通は捨てられてしまうので、そういった意味でもこれらは貴重なものです」
飯塚隊員「捨てちゃうなんてもったいない気もするけど、当時はそれくらいのものだったのかな。モノの価値って分からないものだね」

さまざまな分野の標本がギャラリーにズラリ


入口の広間で、すでに展示物に興味津々の隊員たち。いよいよギャラリーへと足を踏み入れます。
角田隊員「うわ、すげー! なんか映画の世界みたいだ。おしゃれ」
カエルやキリン、コウモリといったさまざまな動物の骨格標本や剥製が、巨大な空間にズラリ。まるで、ひとつの研究室のようですね。アンティークな棚やショーケースも、その多くが大学で実際に使われていたもので、クラシカルでオーセンティックな雰囲気に満ちています。

飯塚隊員「薄暗がりのミュージアムってワクワクするけど、ちょっと怖い気もするね(笑)夜になると動き出しそう」

ギャラリーに入って右手にあるこの部屋は、東京大学の昭和初期の階段教室を再現した空間“アカデミア”。壁面には、歴代の教授の肖像画が掛けられています。
部屋に置かれた机になにやら興味津々の角田隊員。
角田隊員「なんだかすごく年季が入っている気がするな、この机」
松原先生
「角田さん、さすが。この机は最近まで実際に東大の医学部で使用されていたものなんです。ほら、机の脚にはちゃんと“大學”って書かれているので」
飯塚隊員「へー。じゃあ、この机で数々の東大生が学んでいたわけだ」

ショーケースが並ぶレトロモダンな館内を歩き始める隊員たち。異彩を放つ展示物が、3人の前に次々と現れます。
角田隊員「でかっ!!これはなに、馬?」
豊本隊員「いや、馬ってこんなにでかかったかな?」
松原先生
「北海道に、馬にソリを引かせるばんえい競走があるじゃないですか。あの馬の骨格標本です。でかいものを引かせる馬って、これくらいデカいんですよ」

飯塚隊員
「へー。馬の骨格ってこんな風になってるなんて知らなかったなー。頭とか見ると恐竜みたいだもんね。すねとかは思った以上に細いけど」

角田隊員「いや、これもでかっ!!」
飯塚隊員「角ちゃん、ずっとそればっか言ってるね(笑)」
松原先生
「ミンククジラの本物の骨格標本ですね。だいたい8mくらいかな」
角田隊員「本物!!すごいお宝じゃない!」

飯塚隊員「これだけでかいのにお腹周りには全然骨がないんだね。あってもよさそうだけど」
豊本隊員「この部分だけ、たまたま揃ってないんじゃないの?」
松原先生
「いえ、実はクジラは水中生活に適応するために、進化の過程で後肢は退化したんです。なので、こんな感じで下半身は骨がほとんどなくてスカスカ。イルカなどもそうなんですけど」
角田隊員「あ、じゃあほんとにクジラの骨格はこんな感じなんだ」
飯塚隊員「何千万年か前にはあったんだ。 へぇー、そういったことを学べるのもおもしろいねー」

これらの巨大な骨格標本も古くから大学が所蔵していたそうです。しかし、これまでは組み立てて置いておくスペースがなかったのだとか。
松原先生
「この場所はもともと、旧東京中央郵便局の仕分け室だったんですよ。当時はすごく高い棚とかもあったそうで」
角田隊員「なるほど。だからこんなに天井が高いんですね」
松原先生
「はい。これだけの広いスペースがあれば、クジラでもキリンでもなんでも置き放題なので(笑)」
続いて現れたのは、多様な動物の剥製標本が陳列されたショーケース。アザラシやタイワンヤマネコなど現代では貴重なモノも並んでいて、東大の標本収集の歴史が感じられます。

飯塚隊員「さっきから気になってたんですけど、学生や研究者は動物の標本からどういったことを学ぶんですかね? 例えば、この剥製だと」
松原先生
「えーとですね。昔は、“こんな生き物がいます”っていうのを一番手っ取り早く見せられるのが剥製だったんですよ。写真や動画が現代ほど発達していなかったので」
飯塚隊員「そっかそっか、確かに昔はそうだよね」
松原先生
「また、種を分類するときに比較する基準でもありますね。これは骨格標本にもいえることで、今でも変わらない」

松原先生
「骨格標本は、動物の動きの仕組みの解析にも役立ちます。例えばこのキリン。キリンは
これだけ首が長いのに、骨の数はほかの哺乳類と同じくきっちり7個なんですけど…」
角田隊員「いや、まずその事実が驚きですが(笑)」
松原先生
「最近の研究で、脊椎骨の一部が首みたいに動くということが新たに解明されました」
豊本隊員「そんなことも標本から分かるんですか?」
松原先生
「標本と、あとは生きている動物の観察などから」
飯塚隊員「へー、ホントにいろんな情報を持っているものなんですね」
松原先生
「まあ、それが学術標本のひとつの特徴ですよね。あくまで教育研究の対象ですから」
知的好奇心をくすぐる展示物の数々に驚きっぱなしの隊員たち。また、その分野も多岐に渡ります。
これは江戸時代末期まで医学研究の場で用いられていた木彫の人頭骨を、現代の彫刻家が再現したもの。昔は死人に触れることがタブーとされていたため、このような木骨で勉強していたそうです。
こちらは巨大ダイヤモンドの模型コレクション。人を惹きつける美しいダイヤモンドには、さまざまな伝説が残されています。

角田隊員「あれだ、呪いで持ち主が不幸に合うってやつ。ルパンとかでもやってたよね」
松原先生
「その類の話は、実際は盗難を防ぐためのウワサだと思いますが(笑)」
角田隊員「あ、そうなんですか(笑)」
巨大な展示棚にも、鳥類などの標本がびっしり。ちなみにこの棚の扉は、実際に昔の教授部屋で使われていたもので、上段に並ぶ書籍は動物学や医学教室から出てきたとても貴重なものだそうです。やっぱり貫禄がありますね~。

展示物と同じく、ユニークで斬新な展示フロア


ここで、飯塚隊員があることに気づきます。
飯塚隊員「こうして見て回っていると、いろんなジャンルのものが意表を突いて出てきますよね。バラバラというか、ランダムというか」
松原先生
「そうなんです。実は、それがインターメディアテクのひとつの特徴でして。多くの博物館や美術館では、展示物をジャンルごとに整理してストーリー化していると思いますが、ここではあえてそういったことはせず、混ぜこぜにして展示しています。ですから、館内も見学順路みたいなものは特にないんです。訪れた方には研究室や収蔵庫に潜り込んだ気分で、興味の赴くままにウロウロしていただきたいので」
角田隊員「ドン・キホーテ方式ってわけだ!」
飯塚隊員「いや、その例えはどうかと思うわ(笑)」
豊本隊員「骨やらダイヤやら剥製やら、予想もしていないものが次々出てくるとワクワクするもんね。ほかにどんなものが見られるんだろうって」
松原先生
「はい。大学の学術標本は教育や研究のために収集したものがほとんどなので、一般の人にとっては見慣れないものが多く、美術品と違って一見しただけではその価値が分かりにくかったりもします。そういったものは、ストーリー仕立てにして言葉で説明する前に、まずは視覚的、感覚的に触れて、いろんなことを感じ取ってもらいたい」
飯塚隊員「なるほどねー。確かに眺めていると研究者の発想の奇抜さとか、なんでこんなモノに関心を持ったんだろうとか、いろんなことに興味が湧いてきます」
松原先生
「それも学術標本のひとつの魅力、楽しみ方だと思います」

次に3人が案内されたのは、緑の壁に囲まれた部屋。窓のない空間に巨大なカニやら彫像やら、なにやら怪しげな展示物がいろいろと陳列されています。

さっそく視界に飛び込んできたのは、巨大な花?のようなもの。
角田隊員「で、でかっ!!今日はでかいものばっかりだな!」
松原先生
「これは“ショクダイオオコンニャク”という、インドネシアのスマトラ島のみに生息する世界一大きな花(花の集合体)の押し花です」
飯塚隊員「はー、世界一!! え、でも、これだけ大きなものをどうやって押し花にするんですかね(笑)。本に閉じておくってわけにもいかないでしょうし…」
松原先生
「これは、うちのキュレーターがかなり苦労したみたいです(笑)。段ボールに挟んで袋に入れて、熱風を吹き入れてもう一方から布団乾燥機で吸い出すみたいな…」

飯塚隊員「ハハハ。聞いてるだけでも、めちゃめちゃ大変そう(笑)」
豊本隊員「展示物の裏には、そんな知られざる苦労があるんだね」

松原先生
「この部屋は“ギメ・ルーム”といいまして。数年前に、フランスにあるギメ美術館の100年ほど前の貴重な大型ガラスケースが寄贈されたんですよ。それで、せっかくなのでそのケースを用いた展示スペースを、ということで設けられました。実は、この部屋で一番見てもらいたいものはケースのほうだったりするんですよね(笑)」
飯塚隊員「ケースありきなんだ(笑)それもおもしろい話だ」

角田隊員「このケースは、ちょっとヒビが入っちゃってる」
松原先生
「フランスから運んでくるときに割れちゃったんですよ。でもケース自体が文化財級なのでうっかり触れないし、完全に修復すると現代のガラスと入れ替わってしまうのでそのままにしています」
豊本隊員「へー。知らない人にとってはただのケースにしか見えないよね。見る人によってもモノの価値って大きく変わるものなんだなー」
さまざまな分野の標本や研究資料が入り乱れる混沌とした空間には、松原先生でも正体不明なものもあるようです。
松原先生
「ときどき誰にも分からないものが展示スペースにポンと置いてあったりするんですよね(笑)研究していた本人でないと分からないものとか、趣味で手に入れたものとか」
角田隊員「あーなんか、すごく研究者っぽいですね、それ。探求心のままにというか」
松原先生
「はい。入手して調べてみたけど、結局よく分かんなかったっていうこともあるので。あとは館長の私物とかも置いてあったり(笑)」
飯塚隊員「そんなものもあるんだ(笑)カオスな感じだね。いいねー」

見た目だけでは分からない、モノの価値


幾多の展示物を見てきてすでに満足気味の3人ですが、ここはまだ1階。2階にもたくさんの貴重な資料が展示されています。

2階のフロアに入ってすぐのところにあるのは、かつて東京大学の安田講堂に掛けられていた木製時計。これは2代目で、現在のものは3代目。ちなみに1階のギメ・ルームには初代の時計の針も展示されています。
松原先生
「なんでこんな、ヘニョヘニョの手作り感満載のデザインなんでしょうね(笑)」
角田隊員「ホントですよねー」
飯塚隊員「いや、乗るんじゃないよ、そこは(笑)」
ほかにも、さきほどのショクダイオオコンニャクの、ほぼほぼ原寸大の写真や、

テーブルいっぱいの大きな帆船の模型なども。
松原先生
「昔は工学部に造船学科がありまして。そのころに山ほどあった模型の一つです。傷んでいるのでできれば修理したいんですけど、直すのにも特殊な技術が必要で。これがなかなか難しいんですよね」
飯塚隊員「当時はいっぱいあったのにね。今ほど貴重なものではなかったのかな」

豊本隊員「いやー、展示物の質はもちろんだけど数もすごいよね。冗談抜きで一日いれるんじゃないの?」
飯塚隊員「ひとつひとつじっくり見たら1日かかっちゃうかも。ところで先生、一番貴重な展示物ってどれになるんですか?」
ストレートな質問を投げかける飯塚隊員。

松原先生
「うーん、そうですねー。どれもそうなんですけど、例えばこの辺は学術的には貴重なものです」
そういって松原先生が指差したケースの中には、黒い鉄の棒のようなものが3つ並んでいます。

飯塚隊員「え、これ?なんですか、これは?」
松原先生
「“メートル原器”。“これが1mです”っていう、サイズを測定する際のもとになるものです」
角田隊員「ほおーーーーーーーー! そんなものが…。存在すら知らなかったわ」
飯塚隊員「すげー、感動してるじゃん。角ちゃん(笑)」
松原先生
「学内での基準としていたものですね。国内の統一基準ができたのはもう少し後なので。メートル法とヤード・ポンド法、尺貫法と3つの単位を用いていたので、3本あるんです。いずれも明治時代に作られた本物です」
角田隊員「うちの大学ではこれが基準だよってことね。おもしろいねー、ほんと想像してないものが次から次へと出てくるね」
松原先生
「なので、さっき見た馬やクジラの標本のような分かりやすくて派手なものももちろん学術的価値があるんですが、こういう一見すると地味なものも貴重な価値があったりするんですよ。そういったことも訪れた人に知っていただけると嬉しいですね」
飯塚隊員「なるほどねー。やっぱりモノの価値ってホントに分からないものだね~」

ということで、東京大学が所蔵するアカデミックな学術標本に触れてきた3人。個性に富んだ姿の裏には、研究者ならではの発想や教育研究の歴史、各時代の背景など、さまざまな情報が含まれていて、知れば知るほど興味が湧いてくるものばかりでした。時代や見る人によって価値が変わるというのは、私たちの周りのいろんなことに当てはまることかもしれませんね。
松原先生のお話も、その言葉の端々に研究者としての好奇心や探求心が感じられて、とてもおもしろかったです。ご協力ありがとうございました!
今回の記事では紹介しきれなかったユニークな展示物がまだまだいっぱいあるので、あとは自分の目で確かめに、ミュージアムを訪れてみてください!

取材協力/インターメディアテク
日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館の協働で、2013年にオープンした入場無料のミュージアム。旧東京中央郵便局舎を全面改修した館内には、東京大学が誇る貴重な学術標本コレクションが多数展示されている。オリジナルグッズが揃うミュージアムショップも併設。
DATA
住所/東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階
入場料/無料
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
営業時間/11:00-18:00(金・土曜は20時まで開館)
定休日/月曜休(祝日の場合は翌日休)
公式サイト
※新型コロナウィルス感染症の影響で、掲載したお店や施設の臨時休業および、営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。

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