雨を活用、2万3000トン超 墨田区はミニダム

2021年6月15日 07時00分

雨どいから手作りのタンクに雨水を貯める仕組みを説明する「雨水市民の会」の高橋朝子事務局長=いずれも墨田区で

 雨水、生かしてみませんか−。東京スカイツリーや両国国技館のある東京の下町、墨田区は実は雨水利用の先進地。区内には雨水を生かす大小の仕掛けがあちこちに。都内では年間の水道使用量を上回る雨が降る。この豊かな水資源を捨ててしまうのはもったいないと、区は約四十年前から「都市のミニダム」化に取り組んでいる。

路地尊

 「これが路地尊(ろじそん)です」。雨水を生かす運動を進めるNPO「雨水市民の会」の高橋朝子事務局長の案内で、木造住宅が密集する同区向島を訪れると、路地に井戸のような設備があった。
 近隣の家の屋根に降った水を地下のタンクに貯(た)めて、手押しポンプでくみ出す仕組みで、デザインは江戸時代の防火用水「天水桶(てんすいおけ)」をまねた。消防車の入りにくい路地裏の防災のシンボルとして作られ、「路地を尊ぼう」という考えから命名された。区内二十一カ所にあり、地下に三〜十トンの貯水槽がある。飲用には向かないが、家庭菜園や観葉植物の水やり、子どもの水遊びなど普段は近所の人たちが生活用水として利用しているという。よく見ると周りの家々には花や緑があふれている。「近くで火災が発生したときには、住民が路地尊からのバケツリレーで初期消火に役立ったこともあります」と高橋さん。
 さらに歩くと、住宅の軒下や公園、学校の校庭に「天水尊(てんすいそん)」と書かれた高さ一メートルほどの青いタンクがあった。雨どいからの雨水が、ふたの付いたタンク内に入り、下の蛇口から水が出る仕組みで、掃除や洗車、打ち水などに役立てられているという。雨水タンク設置希望者には区の助成がある。

天水尊

 荒川と隅田川の下流域にある墨田区は、昔から河川の氾濫で浸水被害が多発していた。明治時代には全域が浸水したことも。近年は都市化が進み、ゲリラ豪雨などで一気に流れ込む雨水に排水が追いつかなくなる都市型洪水も対策の必要が高まった。一方で都内で使われる水の大半は上流のダムに頼っており、雨不足による渇水の懸念もある。

両国国技館 1000トン

 そこで公共施設や学校、ビルなどに設置した雨水タンクに雨水を一時的に貯めて水源化するとともに、水害防止のために流水量を分散させてピークを緩和する取り組みを始めた。これが「都市のミニダム」化だ。

スカイツリー 2635トン

 両国国技館、東京スカイツリー、区役所、江戸東京博物館などの大規模施設の地下には、千トン以上の雨水タンクが埋まっている。一定規模のマンションやビルの貯水設備、家庭用タンクも合わせた区内約六百基以上の雨水タンクの総貯水量は二万三千トンを超えるという。
 中でも区内最大の「ダム」は東京スカイツリー。地下には二千六百三十五トンもの雨水タンクがあり、植栽の水やりは、ほぼ雨水で賄っているという。また、区役所や銭湯「御谷(みこく)湯」でも、雨水をトイレの洗浄水などに生かしている。
 区内では一九九四年に「雨水利用東京国際会議」が開催された。「雨水市民の会」はこの時の実行委員有志が始めた。「流せば洪水、貯めれば資源」をモットーに、簡単にできる雨水タンクの作り方や子どもたちへの環境教育など、さまざまな「雨活(あめかつ)」を紹介している。「雨水を含めた水循環に目を向けて、水を基軸に環境を守る暮らし方の一つが雨水活用です」と高橋さん。
 「まずは雨水を貯めてみることです。雨の日にバケツを出しておいて、植木に水をやることから始めてもいいですね」
 文・長竹祐子  写真・沢田将人、武藤健一、長竹祐子
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