白木屋中村傳兵衞商店 7代目当主・中村悟さん「江戸箒」

2021年6月15日 07時09分
 江戸後期の創業当時、京橋は竹問屋が並ぶ「竹河岸」で、ほうきの原材料を仕入れやすい立地だったという。白木屋中村傳兵衛商店7代目当主の中村悟さん(61)は「当初から作り方は変わりません」と胸を張る。
 看板商品「江戸箒(ほうき)」の職人は30〜80代の3人。数ある工程の中でも、穂の材料となるホウキモロコシの選別が特に鍵を握る。太さ、柔らかさ、色などの違いを1本ずつ手に取って確かめ、20等級により分ける。江戸箒に使われるのは上位3等級だけ。同質の材料を使っても、柄と穂先のバランス、重心の置き方で、使い勝手が違ってくる。いかに軽く感じさせるかも職人の腕の見せどころという。「じゅうたんを掃いてみて。びっくりするくらいほこりが取れます」。適度な「しなり」がなせる技だ。
 中村さんが入社した30年前、住宅事情の変化などでほうきの需要は低迷していた。「集合住宅では、両手で持つ長柄より、短い方が使いやすく収納場所も取らない」と、片手で使える「手箒」を提案。長柄に代わり主流となった。
 2006年にタイ北部を襲った洪水では、契約していたホウキモロコシ畑が流され、原材料の供給が止まった。そこで、丈が短いために選別ではじかれた材料を使って、手箒より幅が狭くて軽く、柄は長めの「おてがる箒」を発売。
 江戸時代から守ってきた形を変えることに、職人は難色を示したが、頼み込んだ。1000本が1年で売り切れた。「年を取って手箒が重く感じる」「背が高いので手箒では少し丈が短い」といった顧客の要望にも応えられた。
 長年付き合いのあった茨城県つくば市の農家がホウキモロコシの栽培をやめ、国産原料の供給がピンチに陥った際は、地元の中央区に掛け合って友好都市である山形県東根市の農家を紹介してもらい、生産を軌道に乗せた。
 電源がいらず、排気がなく、音が出ない「環境負荷の少ない道具」として再評価されている、ほうき。「一本のほうきが持続可能な社会づくりへの一歩になる」。時代に即しつつ、伝統の粋を守り続けていく。 (小形佳奈)

◆ここがポイント

 江戸時代から変わらぬ技術で、住宅事情に合わせて小型化も、環境負荷少ない掃除道具です。

<江戸箒> 赤いラインの「特上」(1万1000円)と緑の「上」(8800円)のホウキモロコシはインドネシア産。同国産を使った「おてがる箒」(4950円)、日本産原料を使った「江戸手箒・地草・上」(2万2000円)なども。写真(上)は「張りみ(和紙のちりとり)・穴なし大」(1540円)。同社=東京都中央区京橋3の9の8、(電)03・3563・1771、および同社HPで購入できる。


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