防衛名目の土地規制法が成立「あまりに内容すかすか」 私権制限の懸念ぬぐえず

2021年6月16日 06時00分
 自衛隊・米軍の基地周辺や国境離島の土地利用を規制する法案が成立した。新たな法制は、対象区域や土地所有者に対する調査項目など、地域住民にとって影響の大きい内容を条文に何も記していない。政府は重要な土地を外国資本などに押さえられ、日本の防衛に支障が出る事態を防ぐ必要があると強調するが、曖昧な制度の乱用により、私権が過度に制限される懸念は国会審議でも解消されなかった。(新開浩)

◆対象施設は不明

 新法制は防衛施設などの周囲約1キロを「注視区域」に指定し、区域内で政府が土地の利用状況を調べられるようにする。司令部や防空施設などの特定重要施設の周辺は「特別注視区域」に指定でき、200平方メートル以上の土地売買に事前届け出を義務付ける。
 しかし、政府は具体的な対象施設を一切明らかにせず、東京・市谷の防衛省本省が該当するかどうかすら明確にしていない。
 岸信夫防衛相は今月の参院での審議で、防衛省について「国家防衛の中枢だ。特定重要施設に該当しうる」と語った。一方、内閣官房の担当者は、同省周辺に広がる市街地に配慮し「注視区域に指定されないことも論理的にはありうる」と説明した。
 整合性の取れない答弁に共産党の田村智子政策委員長は「(区域指定は)首相のさじ加減と言わんばかりだ」と反発した。

◆自衛隊が調査する可能性も?


 区域内で政府が行う調査の対象者や、調べる項目も不透明だ。内閣官房の担当者は対象を「区域内の土地所有者ら」とし、基地反対運動の参加者らは対象にならないと説明。個人の思想・信条などの調査は想定していないと語った。
 ただ、こうした内容は条文に明記されていない。そのことを野党議員に指摘された内閣官房の担当者は、思想・信条などの個人情報の調査について「条文の規定で排除されてはいない」と認めた。
 実際の調査を、防衛省や警察、公安調査庁などが担う場合があることも審議を通じて明らかになった。立憲民主党の小西洋之参院議員は「国防の組織である自衛隊が、この法律によって、国民生活を調査し監視する組織に変わってしまう」と危惧。過去に自衛隊の情報保全隊がイラク派遣反対運動に参加した市民を監視した問題が発覚し、国への賠償命令が確定した経緯を指摘した野党議員もいて、自衛隊が住民の調査に関与することの是非も論点となった。
 法案は、土地所有者らが基地の機能を阻害する行為を行う恐れがある場合、国が中止を勧告・命令できるようにするが、この「阻害行為」も具体例は示されていない。行為の内容や対象施設、調査項目などの詳細は、法成立後に閣議決定する基本方針で定める。
 立民の杉尾秀哉参院議員は「あまりにも中身がすかすか。すべて基本方針に丸投げされている。このまま法案を通していいのか」と疑問を投げかけた。

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