五輪開催なら「無観客で」と求める声 保健所は「既に限界」と負担増を懸念、政府は観客上限の引き上げ視野

2021年6月15日 20時46分
 緊急事態宣言解除に伴うイベント開催条件の緩和を機に、東京五輪・パラリンピックの観客上限の引き上げも視野に入れる政府に対し、東京都内の保健所は新型コロナウイルス感染症対応の負担増加を懸念している。大会時はスタッフやボランティアなどの陽性者対応も担う可能性があり、「無観客で開催してほしい」という声も上がる。(原田遼)

◆都担当者「観客は行動把握しづらい」

 1万5000人収容の東京アクアティックスセンターなど、大会の10会場が集中する東京都江東区。区保健所の干泥ひどろ功夫健康推進課長は「観客が増えれば、それだけボランティアなど関係者の人数も膨らみ、感染者が出る可能性が増える。区民に影響を出さずに対応できるだろうか」と不安を隠せない。
 感染症法では感染者が出た場合、受診した病院を管轄する保健所が対応し、濃厚接触者の追跡や宿泊療養・入院の調整を行う。大会時は、競技会場周辺のホテルに観客が泊まることが想定され、感染者が出た場合は地元の保健所が対応を迫られる。
 現在、緊急事態宣言対象地域の観客上限は「5000人」か「収容50%」のどちらか少ない方。これを大会に当てはめた場合、五輪だけで延べ310万人が観戦することが、本紙の試算で分かっている。上限が緩和された場合は、さらに観客が増えることになる。
 都福祉保健局の担当者は「選手村や競技会場に行き先が限定される選手と異なり、観客は行動を把握しづらい。陽性者が出た場合、濃厚接触者の調査などが難しくなる」と話した。

◆「対策あるか」に返事なし

 都によると、選手については中央区晴海の選手村周辺に同区保健所の分室を置き、都本庁から派遣される保健師2~3人、事務員10人程度で陽性者の対応を行う。ただ選手村外に宿泊している大会関係者やメディア、ボランティアについては明確に管轄が決まっておらず、各区の保健所が担う可能性があるという。
 北区保健所の前田秀雄所長によると、5月下旬、大会組織委員会の担当者が、大会関係者や観客に感染者が出た場合の対応を依頼してきた。前田所長は「保健所は既にいっぱいいっぱいの状況で、態勢の拡充はできない。何か対策はあるか」と質問したが、答えは返ってこなかったという。
 前田所長は本紙の取材に対し、「観客が増えるほど、祝祭ムードが高まり、国民や都民の対策が緩む。科学的にリスクを分析し、最小限の形で大会を開催してほしい」と求めた。

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