双子のお出かけ 楽になった? 都営バス、2人乗りベビーカー畳まずOK

2021年6月16日 07時07分

都営バスから2人乗りベビーカーを降ろす松本彩乃さん=いずれも杉並区で

 日常の交通手段として欠かせない路線バスで、二人乗りベビーカーに子どもを乗せたまま乗車できるよう変更する動きが出てきた。子ども一人でも大変なのに、二人も抱えてベビーカーを折り畳んでいた保護者にとって、まさに交通革命だ。果たして東京の街は双子連れに優しくなったのか、親子のお出かけに同行してみた。
 同行させてもらったのは、杉並区の松本彩乃さん(36)と双子の男児(2つ)。都営バスでは昨年九月から、試験的に五路線で二人乗りベビーカーを畳まず乗車できるようにし、今年六月七日から全路線に拡大した。私たちはこの日、都営バスに乗って同区立蚕糸(さんし)の森公園へ向かった。
 待ち合わせ場所に現れた松本さん。二つのかばんには、おむつ、水筒、おもちゃ、着替え、抱っこひもなどがぎっしり。重さはベビーカーが十キロ、荷物が四キロもある。二人で計二十五キロの子どもたちを抱えながら、一人でベビーカーを畳むのはとてもできそうにない。

幅は1人乗りの1.5倍

 阿佐ケ谷駅前からバスに乗り込む。「本当に乗れるか心配。めちゃくちゃ緊張してます」とそわそわする松本さん。運転士は目が合うと、何も言わずに二席を畳み、スペースを作ってくれた。前方扉から乗るのが一般的だが、幅が一人乗りの一・五倍ほどある二人乗りは後方の広い扉から。ベビーカーを進行方向と逆向きに止めて、運転士の説明通りに手すりから下がっていた二本の青ベルトで固定した。
 乗れて良かった。車外で見ていた記者がそう、ほっとしたときだった。乗車を待っていた人たちが「前のバスにすればよかった。子どもがうるさいでしょ」と話していて、背筋が凍った。記者も息子が幼かったころ、身を縮めるようにベビーカーを押し、バスに乗っていたのを思い出した。
 子どもたちは車内で、「動いた」「速いね」とご機嫌。大きな声を上げそうになると、松本さんがすかさず菓子やおもちゃを取り出し、気をそらせていく。すぐそばの席に座っていた高齢女性が、「応援してるよ」と言わんばかりのにこり顔を向けていて、ちょっと安心した。

荷物もいっぱい

 目的の停留所に到着。後方扉から後ろ向きで降りると、「よかったー」。松本さんの表情がやっと緩んだ。大きなハプニングもなく、徒歩数分で公園にたどり着くと、「これまでバス乗車を諦めていたので感動しました。移動しやすくなり、子どもたちの経験の幅を狭めさせることがない」と再び笑顔を見せた。
 一人乗りベビーカーはこれまでも畳まずに乗れたが、国土交通省の協議会は昨年三月、二人乗りも畳まずバスに乗車できる運用を基本とする考え方をまとめた。横浜市営バスは昨年十一月から全線で導入している。一方で、民間バス会社に取材すると、畳まず乗せてくれる会社もあったが、二人乗りは幅が広いので方向転換できない、他の乗客が移動できないなどの理由で、畳むことを求める会社もあった。
 国や都に要請活動を続けてきた認定NPO法人フローレンス(千代田区)は、業界団体にも要請活動を展開する方針だ。「こうした動きが続くよう、当事者の声を伝えたい」と同NPOの市倉加寿代さん(36)。一方で、「周囲から白い目を向けられれば、当事者は外出しにくいまま。例えば、乗車に時間がかかっても、『お互いさま』と温かく見守れる社会になるよう、私たち一人一人も変わらなければ」と話す。
 文・中村真暁/写真・内山田正夫
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