カード指さし、お薬相談 聴覚障害者、筆談より楽に 愛知・豊橋 症状説明など普及図る

2021年6月16日 08時02分

薬の絵カードを手にする浅倉基雄さん(左)と佐藤亜子さん(右)、平松靖一郎さん。手前が患者用の携帯版

 耳の不自由な人が薬局でスムーズにコミュニケーションを取れるようにと、愛知県豊橋市では、ろう者や手話通訳者らのグループが、指さすことで意思疎通や情報のやりとりができる「絵カード」を作り、普及を図っている。各地の薬剤師会や病院からも関心を集めており、活用の場が広がりそうだ。 (佐橋大)
 絵カードは一セット三十二枚。「声が聞こえるか」など、コミュニケーション方法を確認するカードをはじめ、アレルギーの有無やジェネリック医薬品(後発薬)の利用希望、生活習慣などを尋ねるカードがある。聞きたいこと、伝えたいことに関するカードを示し、そこに描かれた絵や文字を指さしながら、やりとりをする。
 豊橋手話通訳学習者の会や豊橋市聴覚障害者協会など市内の五団体でつくる「豊橋手話ネットワーク」が昨年六月から作り始め、二月に大小二種類を完成させた。A4判の大きいカードは十五セットを市薬剤師会に配布し、市内の一部の薬局で試験的に使われている。A6判のお薬手帳サイズに折り畳んだ携帯用は、市内の聴覚障害者約百人に渡した。
 同協会の防災福祉対策部長、佐藤亜子さん(53)は薬局で皮膚のアレルギーを説明する際、「体がかゆくなった」「体にぶつぶつが出た」などの症状が記された絵カードを使い、「伝えたい情報を伝えられて役立った」と話す。
 ろう者の中には、音声言語で話す人の口の動きを読み取り、内容を理解する人がいる。しかし最近は、コロナ禍でみんながマスクをしているため、筆談に頼らざるを得ない場面が増えているという。同ネットワークの防災対策委員長で、ろう者の浅倉基雄さん(78)は「筆談は書くのが大変。絵カードは指でさせばよく便利だ」と強調する。

ピョンピョン薬局で活用する絵カードを示す中嶋孝任さん=いずれも愛知県豊橋市で

 市薬剤師会長の中嶋孝任さん(63)は、市内で営む薬局で四月からカードを活用。耳の遠くなった高齢者への説明にも使い、早く確実に情報がやりとりできる手応えを感じた。「誰もが使いやすい薬局にすることが大切」。同会は本年度、絵カードを印刷して希望する薬局に配る予定だ。
 絵カード作りのきっかけは、一昨年十一月に市内であった防災訓練。参加した豊橋手話ネットワークのメンバーと薬剤師らが「病気や薬に関するやりとりは、専門用語が多く、手話や筆談では伝えづらい」と課題を共有し、検討を重ねてきた。
 絵カードの利用を希望する団体には、同ネットワークが一定のルールの下、無償でデータを提供する。既に北海道薬剤師会や、県内の公立病院の薬剤部などから問い合わせがあった。「豊橋手話通訳学習者の会」会長で、絵カードの対外的な窓口を務める平松靖一郎さん(57)は「絵カードを使う機会を増やし、改善点を指摘してほしい。改訂版作りに生かし、より使い勝手の良いものにしたい」。今後、外国人向けの多言語版も作るという。
 (問)豊橋手話通訳学習者の会=メールhoutsukai2016@yahoo.co.jp

関連キーワード

PR情報

シニア・介護の新着

記事一覧