東京五輪中に緊急事態宣言の必要性も…有観客目指す政府 「責任者不在で突撃、第2次世界大戦みたい」

2021年6月17日 06時00分

 新型コロナウイルスに関して厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の16日の会合で、東京都の緊急事態宣言を解除した場合、東京五輪の大会期間中に宣言の再発令が必要となる可能性が指摘された。政府は大会成功アピールのために観客を入れることを目指しているが、専門家は人出が増えて感染がさらに拡大することを懸念している。(沢田千秋、藤川大樹、原田遼、梅野光春)

◆開会式前後に新規感染700人 宣言なしで2000人も

 「宣言解除後の人流を10%増までに抑えても、7月後半から8月前半に宣言の再発令が必要になる可能性がある」。京都大と東北大、国立感染症研究所のシミュレーションによると、7月23日の開会式前後で、東京の新規感染者数は約700人。五輪開催で人流が10%増えると、7月末には約1000人に達する。
 これは、インドで見つかったデルタ株の影響力を小さく見積もった試算。現在流行中の英国由来のアルファ株に比べ感染力、病原性ともに1・2倍とした。影響を大きく見積もり、宣言もないと仮定すると、7月半ばに約2000人に達する。
 厚労省によると、14日時点で国内で確認されたデルタ株は117人だが、専門家組織に出された資料では、7月中旬にデルタ株は感染者の半数以上を占めると予測する。国民の4割以上がワクチンを接種した英国でも、デルタ株のまん延を受けて、今月21日に予定した都市封鎖の全面解除が1カ月延期された。

◆ワクチン神話に専門家は警鐘

 専門家組織座長の脇田隆字感染研所長は「シミュレーションで1番関係するのは、デルタ株の影響と人流増加」と説明。東京の人流は昼夜ともに5週連続で増えており、専門家組織は「リバウンド(再拡大)に向かうことが強く懸念される」と結論付けた。実際、都の発表によると、20代の新規感染者数は6月中旬から増加傾向を見せている。
 政府が「頼みの綱」とするワクチン接種への過度の期待にも、専門家はくぎを刺す。脇田氏は「宣言解除で対策が何もなくなれば、高齢者接種が100%完了してもそれ以下の年齢層の感染者は減らない。ワクチンは強力な武器だが、感染源と感染経路対策が緩むと、1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数は上がる」と明言した。

◆開催リスクの専門家提言 「こういうのは作文」

 都の新規感染者数は16日、約2週間ぶりに500人を上回った。五輪開催を不安視する国民も多く、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、開催リスクに関して政府に提言を出すと表明したが、発表に時間がかかっている。
 専門家の独自性を保ちながら、政府にも受け入れられ、提言に参加する全員が納得できる内容が求められる。あるメンバーは「こういうのは作文だから。どうとでも読めて、皆が納得できるよう(政府とも)協力してやるのが1番いい」と話す。このメンバーによると、提言は大筋で完成した。尾身氏は菅義偉首相に手渡し、説明することにこだわっているという。
 東京五輪はパンデミック(世界的大流行)下で開かれる世界最大のイベントとなる。別のメンバーは「あっと驚くような提言は出てこない。(大会後)組織委は解散し、政府は『俺たちは知らない』と言う。第2次世界大戦みたい。誰か責任者がいるわけでもなく突撃している感じ」と皮肉った。

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