<社説>土地規制法成立 白紙委任はできない

2021年6月17日 06時51分
 通常国会の会期末に当たる十六日未明、安全保障関連施設周辺の土地利用を規制する法律が与党などの賛成多数で成立した。
 自衛隊や米軍の基地、原発などの周辺約一キロや国境の離島を「注視区域」や「特別注視区域」に指定して土地利用の調査、規制を可能にする内容だ。刑事罰もある。
 しかし、政府が施設や区域をどう指定し、土地利用について誰がどう調べるのか、そもそも「機能阻害行為」とは何を指すのか、いずれも明文化されていない。「その他政令で定めるもの」などの表現で、政府による裁量の余地を大幅に残している。
 そもそも法律で明確に定めておくべき事項を政令に委ね、憲法が保障する財産権やプライバシー権をも侵害する恐れがある法律だ。とても放置はできない。
 在日米軍専用施設の七割が集中する沖縄での影響は特に大きい。普天間飛行場=写真=を市街地が取り囲む宜野湾市では、約十万人のほぼ全市民が土地の所有、利用者として調査対象となり得る。国境の離島として、住民が住む沖縄県内全ての地域が指定される可能性も否定できない。
 東京都新宿区の防衛省、愛知県小牧市の航空自衛隊小牧基地など本土でも市街地の安保関連施設は多く、市民生活や不動産売買にどんな影響が出るのか不透明だ。
 参院内閣委員会の十四日の参考人質疑では、与野党それぞれが推薦した三人の参考人全員が条文のあいまいさを指摘した。政府は法案審議を通じ、恣意(しい)的運用に対する懸念に何も答えてはいない。
 そればかりか、付則にある五年後の見直し規定に関し、約三キロ圏への指定区域拡大や土地の強制収用など規制強化に言及することすらあった。とても看過できない。
 政府は二〇二二年度の法運用開始を目指し、区域指定や機能阻害行為の例示に取り組むというが、自治体や対象地域住民の意見を丁寧に聞き、検討状況をその都度、国会に報告すべきだ。
 国民の暮らしに大きな影響を与えかねない法律だ。政府は白紙委任されたわけではないことを、肝に銘じるべきである。

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