廃材だから温かい アートに再生 さびや傷も味わいに 暮らし見つめSDGsのヒントに

2021年6月18日 07時07分

廃材でつくられたフラミンゴ

 服や車など、世の中には中古品があふれている。新品を上回る輝きを放つことはそう多くなさそうだが、逆に使い古した素材を組み合わせることでしか表せない温かみ、生命感を引き出す芸術家たちもいる。廃材を「お宝」として活用した芸術作品の魅力とは−
 か細い足でピンと立った高さ一メートル二十センチのフラミンゴ。そのたたずまいには、生き生きとした生命力がある。造形作家・富田菜摘さん(34)が昨年完成させた。三鷹市出身で現在は練馬区の自宅一室をアトリエとして創作に当たっている。
 目を凝らして見ると、思わず噴き出してしまう。S字に曲がった首は、そば店でおなじみの七味唐辛子の缶や果物の缶詰の空き缶などを加工し、針金でつないでいる。羽はフライ返しや蒸し器などの台所用品。立体的に見える羽毛はビール瓶の王冠だ。

モコモコの羽毛はビール瓶の王冠

 「新品だとメカのような冷たい作り物感が出てしまう。廃材は誰かが使っていたストーリーがある。それが、さびや色あせ、傷などになり、表面に刻まれ、一つとして同じ物がない。年月を経て使い込まれた風合いが味わいとなり、温かみにつながっていると思う」
 現在は子育て中のため遠隔で取材に応じた富田さんは廃材に宿る魅力を説いた。美術予備校に通っていた高校三年時、初めて廃材で海イグアナの造形を制作。ツボにはまり、多摩美術大でも絵画科油画専攻ながら油絵を描かず、廃材で立体動物を作り続けた。それでも立体造形の出来が良かったので専攻を首席で卒業した。

スプーンやねじでできたネズミ

 パスタ用トングで鋭い歯を表現した二メートル超の恐竜や、スプーン、ネジ、自転車のブレーキ線などで作った十数センチのかわいいネズミなどの代表作もある。
 「一度役割を終えた廃材を生きものとして生まれ変わらせたいという思い。普段何げなく使っているものでも、見つめ直すと面白い形や色、味わい深いものがたくさんある。作品を通して見た方の視点を変えたり、廃材の魅力を発見したりしてもらえたらうれしい」

材料は大小さまざまのカラフルな廃材

 富田さんのフラミンゴとネズミの作品は日本橋高島屋の高島屋史料館TOKYO(中央区)で開催中の「クリエイティブリユース−廃材・端材からはじまる世界」で展示されている。
 富田さんのほかに五人の芸術家が廃材を活用した作品を並べている。ホテルで使われなくなった洋食器や動物が描かれた保育園で使われるゲームカードを文字盤にした壁掛け時計に感じる温かさや懐かしさ。廃材を燃料に壊れた陶磁器を窯で再び火に掛け、予想外の柄や形を浮かび上がらせた食器も独創的だ。

壁掛け時計に生まれ変わった子ども用のゲームカード

 展示を監修する文化芸術企画家で「クリエイティブリユース」と題した著書もある大月ヒロ子さん(64)は力を込めて訴える。「不要な物、捨てられそうになった物を色や素材別に丁寧に分類、整理すると、別の使い方、新しい生かし方が浮かぶ瞬間がある。素材として並べ、すぐに使えるようにしてみると想像力と創造力が刺激される。素材の面白さや美しさを生かせば、心豊かな暮らしにつながりますよ」

廃材を組み合わせた恐竜と造形作家の富田菜摘さん(本人提供)

 最近よく聞く「SDGs(持続可能な開発目標)」の真ん中を行く取り組みだろう。作品を眺めることで、自身の暮らしを変えてみる、ひらめきやヒントも得られるかもしれない。
 展示は八月二十九日まで。無料。午前十一時〜午後七時。月、火曜日は休館。
 富田さん作の恐竜以外は高島屋史料館TOKYOで展示中
文・井上靖史/写真・伊藤遼
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