<中村雅之 和菓子の芸心>「大黒舞」(山形県米沢市・永井屋菓子店) 正月を寿いだ門付芸

2021年6月18日 07時11分

イラスト・中村鎭

 昭和、平成、令和と時代が移る中で、古くから使われていた言葉で、すっかり死語になってしまった言葉も多い。
 「門付(かどつけ)」も、そんな言葉の一つだ。あらためて説明すると、芸人が家々を訪ね、芸能を見せて回ることだ。玄関先で見せるだけでなく、家の中に招き入れられることもあった。
 1977年公開の映画「竹山(ちくざん)ひとり旅」では、林隆三演じる若き日の津軽三味線の伝説的名人・高橋竹山が、激しい吹雪の中を門付して歩く姿が、強烈な印象を残した。
 正月はどこも「萬歳」「獅子舞」といった新春を寿(ことほ)ぐ門付で賑(にぎ)わった。
 大黒の扮装(ふんそう)で、祝い言葉を連ねながら舞う「大黒舞」も人気があった。室町時代中期の京・相国寺の禅僧が残した公用日記「蔭凉軒日録(いんりょうけんにちろく)」の中にも出てくるから、その頃には、すでにあったことは確かだ。
 その後、「大黒舞」は、時代と地方により、さまざまに形を変えていった。江戸時代後期には見せ物として人気を呼び、歌舞伎の演目にもなった。今でも、全国各地で民俗芸能として受け継がれている。
 紅花で有名な山形県河北町では、地元の人たちが神社の祭りや祝い事の時に舞っている。歌に三味線、尺八、太鼓が入った賑やかなものだ。
 同じ県内の米沢市に「大黒舞」にちなんだ、そのものズバリの名前の餅菓子がある。餡(あん)を古代米の「黒米」入りの餅で包んでいる。餡は「ずんだ」と「胡桃(くるみ)」の2種類。「ずんだ」は枝豆をすりつぶし餡にする山形、宮城を中心とした東北地方の伝統の味。歯ごたえの良さが堪(たま)らない。「大黒舞」は、白インゲン豆を加えコクを出している。黒い餅を割ると、中から色鮮やかな緑色の「ずんだ餡」が顔を出す。コントラストが見事だ。 (横浜能楽堂芸術監督)
<永井屋菓子店> 山形県米沢市中央4の1の16。(電)0238・23・0381。10個入り1490円。

河北町の「谷地大黒舞」=2014年9月


関連キーワード

PR情報

伝統芸能の新着

記事一覧