ベイブリッジ手がけた名デザイナーに迫る 3大学のアート系と工学系学生がコラボ研究 多摩美大で展示会

2021年6月18日 12時00分
 横浜ベイブリッジなどを手掛けた橋梁デザイナー大野美代子さん(故人)の作品を、デザインを学ぶ学生と土木工学系の学生が共同で研究した成果を発表する研究展「ミリからキロまで」が、大野さんの母校・多摩美術大で21日から開かれる。アプローチの仕方が異なるアート系と工学系の学生が、分野の壁を越えて取り組んだユニークな試みだ。(加藤行平)

▽大野美代子 岡山県玉野市出身。多摩美術大卒業後、事務所を起こし、家具や病院待合室などをデザイン。1977年、蓮根歩道橋のデザインに参加後、かつしかハープ橋(首都高速中央環状線)、女神大橋(長崎市)など約70の橋を手がける。土木学会が優れた橋に贈る田中賞を19の橋で受賞。2016年死去、76歳。研究展「ミリからキロまで」の名称は、ミリ単位のデザインから橋をも手がけるスケールの大きさを表現している。

大野美代子研究展の会場予定場所で打ち合わせする環境デザイン学科の学生ら。右から2人目は湯澤幸子教授=多摩美大八王子キャンパスで

 今春、大野さんが主宰したエムアンドエムデザイン事務所(東京都新宿区)から遺品が多摩美大に寄贈され、大野さんを研究する講義がスタート。同大の環境デザイン学科の学生だけでなく、土木工学系の東京大大学院工学系研究科社会基盤学専攻と、法政大デザイン工学部都市環境デザイン工学科の学生も参加した。
 デザイン、土木工学それぞれの視点から大野さんの作品や業績にアプローチするとともに、3大学の学生が分野の垣根を越えて研究成果をまとめ、発表することになった。多摩美大環境デザイン学科の湯澤幸子教授(56)は「アート系と工系学の学生が視点の違い、思考のプロセスの違いを認識して研究をまとめたユニークな実験だ」と位置づけている。
 6グループに分かれた34人の学生は大野さんがデザインした橋を現地調査した。横浜港にかかる横浜ベイブリッジのほか、手すりやベンチを設置して従来の歩道橋の概念を覆した蓮根歩道橋(東京都板橋区)など9つの橋を訪れ、大野さんを直接知る関係者からもヒアリングした。
 多摩美大4年の宮坂仁さん(22)は「作品から感じた、ふわっとしたイメージや感覚をスケッチしたら、土木系の仲間が理屈を付け、言葉で表現してくれた」と共同研究の様子を振り返る。東京大大学院1年の菊池裕太さん(23)は「視点、アプローチは異なっても、ものづくりのコンセプトは同じ。デザイン系の学生と一緒にやっていても『似ているところがあるんだ』と感じた」と評価した。
 この2年間、大学生はコロナ禍のためリモート授業を強いられた。「リモート授業では画面を共有できても、(それ以上の)一歩が踏み出せない。心も体も行動も家から出られなかった」と宮坂さん。「大野さんの研究をきっかけに行動できた」と話す。
 展示会は21日~7月7日、多摩美大八王子キャンパスアートテークギャラリー(八王子市鑓水)で。午前10時―午後5時、入場無料。日曜日休館。コロナ感染対策として会場では入場制限がある。

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