家電メーカー「バルミューダ」 デザイナーに聞くヒット作の開発秘話<まちビズ最前線>

2021年6月20日 05時50分
 洗練されたデザインと機能性で人気を集める新興家電メーカー、バルミューダ。コロナ禍の巣ごもり需要も追い風にスチームトースターは異例のヒットに。デザインの美しさから「オフィスは海外?」と言われることもあるが、当の本社は東京都武蔵野市にある。ヒット作はどのように生まれているのか。現地を訪ねた。(石川智規)

ワイヤレススピーカーの試作機(上の2つ)を手に、笑顔を見せるバルミューダの高野潤さん=東京都武蔵野市で

◆「体験と価値を大事に」

 「美しいデザインは重視しますが、僕らは製品がもたらす体験や価値でお客さまを喜ばせる物づくりを一番大事にします」。同社クリエイティブ部で製品デザイナーを務める高野潤マネージャー(38)は強調した。
 例えば、高野さんが手掛けたワイヤレススピーカー(3万5200円)。高さ約19センチの円柱形で、ガラス製の真空管のようだ。
 この製品は、デザインありきで考えられたわけではない。「ライブやコンサートで、大きなスピーカーが空気を震わせ、ステージに立つ演者をライトが照らし、光と音が混ざっていく時、感動が生まれる」(高野さん)。それを形にした。スピーカー内部には、発光ダイオード(LED)が内蔵されたガラス管が3つ配され、音の抑揚に合わせて明滅。透明度の高い有機ガラスに反射された光は、ライブステージのような高揚感をかき立てる。

オーブンレンジやスチームトースターなどの商品が並ぶ「バルミューダ 松屋銀座」=東京・銀座で

◆過去最高の販売台数

 累計販売台数が120万台超を誇るトースターの価格は2万5850円と、一般的なトースターより4倍以上高い。だが、高野さんは「朝、最高のパンを食べる体験と価値を感じてもらうため、デザインと機能の妥協は絶対しなかった」と言う。水を投入し、蒸気を起こしてヒーターの温度を1秒単位で制御する技術を開発。外はさくっと香ばしく、中は水分を閉じ込めふわふわに焼き上げる。コロナ禍の昨年4~6月期、過去最高の販売台数を更新した。

バルミューダのスチームトースター

 同社は、元ミュージシャンの寺尾玄代表(47)が03年に設立。寺尾氏はバンド解散後、物づくりを志して武蔵野近隣の工場に飛び込み、設計や製造を学んだ経緯がある。
 高野さんは「屋上に行くと、ビルのない空に夕焼けのグラデーションが見える。東京ならではの華やかさと、どこか懐かしい心落ち着く情景のバランスが取れたこの場所で、暮らしが豊かになる道具をつくりたい」とほほ笑んだ。

バルミューダ 寺尾玄代表が2003年、有限会社バルミューダデザインを設立。11年バルミューダ株式会社に社名変更。20年12月期売上高は約126億円。従業員数120人。

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