コロナワクチン「打たない自由」はない? 接種は「努力義務」なのに…差別、偏見、同調圧力

2021年6月18日 18時00分
 新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化している。先行する欧米各国では、コロナ以前の日常に戻る動きもあり、日本でも追いつき追い越せの大合唱。だが、そんな中でともすれば忘れられがちなのは、接種は強制ではないことだ。接種のメリット・デメリットは十分周知されているか、打たない選択をしても差別や偏見にさらされないか。「打たない自由」を考える。(石井紀代美、佐藤直子) 

父親のワクチン接種後の重篤な副反応について、ネットで情報発信している原田さん(本人提供)

◆父の副反応報告→猛バッシング

 「アメ横や日本橋に出かけると、1日歩き回って夜まで家に帰ってこないぐらい元気な人だったのに…」。信州大特任教授で、若者マーケティングの第一人者・原田曜平さん(44)は声を落とす。
 やや糖尿の傾向はあったものの、ぴんぴんとしていた父親(83)に異変が起きたのは5月10日だった。コロナワクチンを接種し、帰宅後に体調が悪化し、その後、高熱が出続けた。
 母親が、都の副反応相談センターに電話すると「熱が出ることはよくある」と言われた。しかし、接種3日後、体温が約40度まで上がり、原田さんも自宅へ駆けつけた。

 接種後の副反応で体中に赤い斑点ができた原田さんの父親の脚(原田さん提供)

 父親は布団にうつぶせになり、意識は朦朧としていた。着替えのためシャツを脱がせると、体中に発疹。なぜか右のわきの下が、ぼっこりはれ上がっていた。父親は救急車で病院へ運ばれ、集中治療室(ICU)にも入った。全身に赤い斑点が出て「一時は赤鬼のような状態だった」。
 「ワクチンが原因の可能性が高いと考えます」。医師の診断書にはそう書かれていた。このまま進行した場合、敗血症や多臓器不全となり「致死率が20~30%に至ります」とも。
 父親は現在も入院したままだが、熱は下がり、命に別条はないという。ただ、以前のように体は動かず「よちよち歩きで、階段は5段上るのがやっと」。今後、自立した生活は困難とみられ、看護師の助言で要介護認定の審査を受けた。
 こうした一連の経緯から、ワクチンの副反応に関する情報が少なすぎると感じた原田さんはツイッターやユーチューブなどで父親について発信した。だが、「持病が悪化しただけ」「接種の不安をあおるな」などと猛烈なバッシングを浴びた。「私は反ワクチン派でも何でもない。目の前の事実を伝え、一つの判断材料にしてもらおうと思っただけなのに」と原田さん。

◆症例未記載 国の情報公開にも不信感

 一方、重篤化する父親を間近で見ていた母親は、意外にも、迷わず接種を選んだという。原田さんは「ちょっと様子を見よう」と声をかけたが、最終的には「孫を抱っこしたいし、変異株もこわい」という母親の意志を尊重した。「ワクチンを打つも打たないも、個人の選択。『副反応がこわいから打たない』という人がいてもいい。打たない人が、生きづらくなる社会にしてはいけないと思う」
 父親の一件を受け、原田さんは国の情報公開に不信感を抱くようにもなった。厚生労働省が副反応事例をまとめた「報告症例一覧」に、いまだ父親のケースが記載されていないからだ。
 厚労省医薬安全対策課の担当者は「医療機関から報告があれば記載されるはずだ。患者が退院後に送ってくることもあるし、副反応ではないと判断されれば、そもそも報告が来ない」と説明するが、原田さんは「ワクチンへの社会不安が高まれば、接種が思うように進んでいかないと思っているのかもしれないが、それは逆効果。包み隠さずすべての情報を出した方が社会不安は抑えられる」と訴える。
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