自民・稲田朋美氏「党内の反発は予想外」 LGBT法案提出できず「反省」

2021年6月19日 06時00分

◆もっと当事者の声を聞く機会あれば…

 「多様性と調和」を掲げる東京五輪・パラリンピックを前に、成立を目指して与野党が合意していた「LGBT理解増進法案」が、自民党内の了承を得られず国会提出に至らなかった。党の特命委員会で5年以上も議論を重ね、野党も大幅に譲歩した案でさえ、反対意見が噴出、自民の案を自らつぶす形になった。なぜ、法案は提出できなかったのか。稲田朋美特命委員長に聞いた。(奥野斐)

国会に提出できなかったLGBT法案について話す稲田朋美衆院議員=いずれも東京・永田町の衆院第二議員会館で

いなだ・ともみ 1959年、福井県生まれ。早稲田大法学部卒。弁護士。2005年に衆院議員に初当選し5期目。自民党政務調査会長だった16年に「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設立、現在委員長を務める。第2次安倍政権で防衛相、幹事長代行などを歴任した。

 ―率直に、なぜ自民党内の了承を得られなかったのですか。
 「理解増進法もいらない」という人も、かつてはいらっしゃいましたが、5年かけて理解増進法は必要だとなりました。ただ、もっと当事者の声を党内でも聞く機会があれば、誤解は生じなかっただろうと。私自身も反省点はあります。
 与野党合意案に慎重な意見はありましたが、自民党原案の理解増進法には誰も反対していない。5年間の議論も無駄ではなかったし、前進していると思います。
 ―法案のどういう点に反発が出たのでしょう。
 議員立法なので、与野党の合意が必要です。自民党案を1ミリも変えないというのはできなかったので、法案の目的と基本理念に「差別は許されないものであるとの認識の下」と加え、「性自認」の用語を使いつつ、自民党の(従来示してきた「性同一性」の)定義を入れるなど、工夫して与野党合意ができました。非常に狭い道を、何とか合意にたどり着けたという気持ちでした。
 しかし、修正点について慎重な意見が相次ぎました。「この文言が活動家に利用される」とか「差別禁止法になる」「人権擁護法案と一緒だ」と不安の声が湧き起こってしまったのです。
 ―党内の反発は予想外だった?
 予想外でした。自分自身も法律家なので、総理答弁の「不当な差別はあってはならない」は、法的には「差別は許されない」と同じだと思いました。しかし、そこを変えたことへの反発がありました。「あってはならない」と「許されない」は違うと。議員立法ですから、法文の表現ぶりは、もう一度考える余地はあるのではと思っています。

◆「保守」とは多様性を認めること

「保守とは多様性を認めること」と話した稲田議員

 ―もともと「保守」の稲田議員がLGBT法案成立へ動く姿は「変節」とも言われました。
 「保守」とは何かという問題だと思うのです。私は保守とは多様性を認め寛容であること、そして他者の生き方を認めるあたたかさや謙虚さだと思います。人権に関する法律は、イデオロギーではなく、目の前の困っている人や傷ついている人に希望を与えるものでなくてはなりません。右や左の問題ではないと思っています。ただ、もう少し慎重派の方々に言葉を尽くして説明していくべきだと、あらためて感じました。
 私については、表面上は変わったと思われるかもしれないですが、保守政治家の立ち位置、自分の中にある核は変わっていません。自分の国は自分で守る気概のある国、そして人と人との信頼関係や家族、地域の絆、みんなが社会から大切にされていると思える国、つまり「強くて優しい国」をつくりたいと思っています。
 自分が大切にされていると感じることで、人にも社会にも貢献する力が湧いてくるんです。多様性を認めること、すべての人を大切にすることは、むしろ国や家族や故郷を守ることにつながります。決して解体運動ではありません。
 婚前氏続称制度の提唱やLGBT問題、女性活躍など、従来の保守が取り組んできた課題ではないかもしれませんが、私が守りたいものはぶれていません。やさしさやあたたかい心を持つことが国を強くすることですから。
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