「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」どう違う?

2022年1月28日 16時14分

渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々

 新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が猛威を振るい、全国で感染が急拡大している。茨城県や栃木県、静岡県などでも1月27日から「まん延防止等重点措置」が適用され、既に適用中の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県などと合わせ、対象は34都道府県に広がった。東京では入院患者が増え続けて病床使用率が上昇し、都が緊急事態宣言の要請検討の目安としている50%に近づいている。政府が求める「まん延防止措置」での対策は何か。緊急事態宣言になるとどうなるのか。気になる点を整理した。(2022年1月28日更新、デジタル編集部)

◆首都圏の各都県が発表した対処方針など(外部リンク)

◆対象地域での対策

▼飲食店等
 政府の基本的対処方針では、まん延防止措置が適用された地域は都道府県知事の判断で、飲食店に対して営業時間の短縮と酒類を提供しないことや、同一グループの同一テーブルで5人以上の会食を避けることを要請することとしている。ただ、要請の内容は感染防止対策を講じた「認証店」かどうかなどにより異なる。ワクチン接種証明などで会食人数の制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ制度」は原則停止し、より厳格な、検査による全員の陰性確認を要件としている。
 ただ、知事の判断に委ねられている部分もあるため、まん延防止措置が適用された地域の間でも要請内容は異なっており、都道府県からの最新の要請を確認する必要がある。
 政府の基本的対処方針によると、まん延防止措置では、認証店ではない飲食店の場合、営業時間短縮は午後8時までで、酒類の提供停止も要請される。認証店の場合は、営業時間短縮は午後9時までが基本となり、知事の判断で酒類の提供停止を要請することも可能とされる。
 緊急事態宣言では、酒類に加えてカラオケも提供禁止の対象になる。認証店ではない場合、酒類やカラオケを提供しようとすれば休業要請の対象になる。これは、客の酒類の持ち込みを認める場合でも同じだ。ただし、認証店であれば酒類の提供を可能にできる。認証店でのカラオケは、対象者全員が検査で陰性を確認している上、収容率50%以内であれば、提供できるとしている。PCR検査は検体採取日から3日以内、抗原定性検査は検査日より1日以内の結果が有効。
 緊急事態宣言でも、営業時間短縮はまん延防止と同様で、認証店以外が午後8時、認証店が午後9時まで。
 会食の人数制限は、緊急事態宣言でもまん延防止でも、感染防止対策を講じた認証店では、対象者全員が検査で陰性を確認してあれば、5人以上の会食も可能という。違いは、ワクチン接種歴の確認によっても制限を緩和できる「ワクチン・検査パッケージ制度」についての記載だ。まん延防止では、知事の判断で活用することも可能とするただし書きがあり、埼玉県は、同パッケージを活用している。緊急事態宣言には、知事の判断でワクチン・検査パッケージ制度の活用を可能とするただし書きは、書かれていない。

ワクチン・検査パッケージ制度 感染対策と日常生活の両立に向けて、行動制限緩和を可能とするために設けられた制度。飲食店やイベント主催者などが、利用者のワクチン接種歴か陰性の検査結果を確認することで緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによる行動制限を緩和する。内閣官房のウェブサイトによると、ワクチン接種歴は予防接種済証などで2回目の接種日から14日以上経過を確認するとしている。検査は検査実施者が発行する結果通知書で確認する。PCR検査は検体採取日から3日以内、抗原定性検査は検査日より1日以内の結果が有効。

▼イベント等の開催制限

国立競技場=本社ヘリ「おおづる」より

 感染防止安全計画について都道府県による確認を受けているかや、対象者全員の検査で陰性が確認されているかどうかで、制限内容が変わる。
 感染防止安全計画が都道府県による確認を受けてあれば、まん延防止の対象地域では収容定員以内であれば最大2万人まで入場できる。緊急事態宣言になると、収容定員以内の条件は変わらず、人数の上限が最大1万人になる。いずれも、会食の人数制限と同様に、対象者全員の検査で陰性が確認されれば、2万人や1万人の上限を緩和し、収容定員までいれることも可能になる。
 また、まん延防止の対象地域に対しては、知事の判断でワクチン・検査パッケージ制度を活用することでの上限緩和を可能とするただし書きがあり、同制度の活用が決まった都道府県では、ワクチン接種歴の確認でも2万人の上限を緩和できる。一方で、緊急事態宣言では、会食の人数制限と同様に、ワクチン・検査パッケージ制度の活用を可能とするただし書きがない。
 上記以外の場合、まん延防止でも緊急事態宣言でも、人数の上限は5000人までとなる。収容率の制限もあり、大声を出すケースでは収容率50%まで、大声を出さないケースでは収容率100%までが上限となる。都道府県が定めた様式に沿って感染防止策等を記載したチェックリストを主催者が作成し、ウェブサイトなどで公表することも必要。
 イベントの規模にかかわらず、基本的な感染防止策の実施や、参加者名簿による連絡先の把握も求められる。

◆緊急事態宣言とまん延防止措置の違い

▼発令、適用のタイミング
 緊急事態宣言の発令や、まん延防止等重点措置の適用は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が2021年11月8日にまとめたレベル0~4の5段階の「新たなレベル分類」に基づき、医療の逼迫度合いを示す病床使用率などを目安にして判断される。
 緊急事態宣言を出すかどうかは、新たな分類の「レベル3(対策を強化すべきレベル)」相当の状況などが目安となり、政府が判断する。レベル3は「一般医療を相当程度制限しなければ、新型コロナウイルス感染症への医療の対応ができず、医療が必要な人への適切な対応ができなくなると判断された状況」を指す。
 1段階低い「レベル2(警戒を強化すべきレベル)」からレベル3への移行は、分科会の提言では「3週間後に必要とされる病床数」が確保病床数に達するか、病床使用率や重症病床使用率が50%を超えた場合に都道府県が判断するとされていた。ただ、具体的な判断指標は都道府県によって異なる。東京都は病床使用率が50%になった段階で緊急事態宣言の発令の要請を検討するとしている。
 まん延防止等重点措置は、レベル2~3相当の状況になっている場合に適用される。レベル2は「新規陽性者数の増加傾向が見られ、一般医療及び新型コロナウイルス感染症への医療の負荷が生じはじめているが、段階的に対応する病床数を増やすことで、医療が必要な人への適切な対応ができている状況」だ。
 解除は、緊急事態宣言については、レベル2相当の状況になっているかどうかなどが目安になる。まん延防止等重点措置については、対象地域の感染状況が都道府県全域に感染を拡大させる恐れがない水準になっているかどうかなどが目安になる。
▼対策の枠組み
 緊急事態宣言では、飲食店などに対し、休業や営業時間短縮の命令や要請ができる。一方、まん延防止措置では休業の命令や要請はできず、営業時間短縮のみとなる。
▼対象地域
 緊急事態宣言は各都道府県全域が対象になるのに対し、まん延防止措置は特定の地域内で感染を抑え込むことを目的とし、知事が指定した地域のみが対象になる。
▼命令違反の罰則は?
 知事は時短営業や休業の要請を拒んだ飲食店などに命令を出すことができ、命令に応じない場合は行政罰が科される。罰の重さには差があり、緊急事態宣言は30万円以下の過料、まん延防止措置は20万円以下の過料だ。

◆緊急事態宣言、まん延防止措置を巡る課題

感染拡大防止のため外出自粛を呼び掛ける東京都の宣伝トラック

 休業や営業時間短縮の命令、要請を巡っては、線引きが曖昧になり、内容に納得できない業界団体が行政に抗議するケースもある。
 東京都に対する緊急事態宣言が延長された2021年5月には、劇場や演芸場の営業が条件付きで認められた一方、映画館は休業要請のままとなり、映画館の関係者が都庁前で無言の抗議デモを行った。こうした線引きには、都庁内からも「説明が難しい」という声が漏れていた。
 まん延防止措置の対象地域の絞り込みでも、線引きが課題になった。市町村ごとの指定が可能で、地域の感染状況に合わせたきめ細かな対応ができるが、線引きの結果、同じ駅周辺の繁華街で対象になる区域と、ならない区域が混在する事態も起きた。
 東京都に2021年4月12日からまん延防止措置が適用された際には、JR三鷹駅北側の武蔵野市が対象となる一方、南側の三鷹市は対象から外れ、時短営業要請は武蔵野市内の店なら午後8時、三鷹市内なら午後9時と時差が生まれた。適用初日には「つい三鷹市側に来てしまう」と明かす客もいた。
 時短営業などの要請の実効性にも課題がある。実効性は、命令に違反した場合の罰則と、要請に応じた事業者への協力金の支払いによって担保されているが、5月には飲食店経営者から「時短要請に協力したいが、できない」という声が聞かれた。東京都などで時短協力金の支給が遅れていたからだ。5月下旬時点では、3月8~31日分の未支給率が東京都で45.8%、神奈川県で51.0%だった。

◆効果は?

 社会経済活動を強く制限する緊急事態宣言の方が、人の流れを抑制する効果が強い可能性を示すデータはあるものの、宣言期間が長引いた場合に抑制効果が薄れていく傾向もみられる。
 厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」で、東京都医学総合研究所の西田淳志・社会健康医学研究センター長が提出した主な繁華街の滞留人口の分析結果によると、東京都では2021年4月12日のまん延防止措置の適用直後より、同月25日の緊急事態宣言発令直後の方が大幅に減少した。
 この分析は、衛星利用測位システム(GPS)を活用し、繁華街にレジャー目的で滞留したとみられる人口を推定している。東京都では、4月の緊急事態宣言直前に90万人を超えていた午後2~4時の滞留人口が、宣言後には一時的に50万人台にまで下がった。ただ、6月13日までの分析では「5週連続で繁華街滞留人口が増加。夜間・昼間ともに宣言前の水準にまで戻りつつあり、宣言解除後はさらに増加する可能性」と指摘された。

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