イラン新大統領にライシ師当選 イスラエルは警戒強める

2021年6月20日 21時00分

19日、テヘランで、ライシ師の大統領当選を祝う支持者たち=AP

 【テヘラン=蜘手美鶴】任期満了に伴うイラン大統領選で、司法府代表、ライシ師(60)が当選したことを受け、中東各国からは反応が相次いだ。トルコなど複数の国々が当選を祝福する一方で、地域大国サウジアラビアなどは沈黙を保つ。8年ぶりの保守強硬派政権の誕生で、イラクやレバノンなどではイランがさらに影響力を拡大する可能性が指摘され、敵対するイスラエルはイランの核開発進展に警戒を強めている。
 イラン内務省は19日、選挙の最終結果を発表した。投票率は大統領選では過去最低の48・8%。総投票数約2890万票のうち、ライシ師は約1792万票(得票率61・9%)、革命防衛隊元司令官レザイ氏(66)は約341万票(同11・7%)、中央銀行前総裁のヘンマティ氏(64)は約242万票(8・3%)を獲得した。
 国営イラン通信によると、ライシ師当選を受け、ロウハニ大統領は19日、テヘラン市内でライシ師と会談し、「イランの全ての能力と組織を活用すれば、国民の要求に見合うことができる」と当選を祝福したという。また、強硬派のガリバフ国会議長もライシ師と面会し、祝辞を述べた。
 一方、トルコのエルドアン大統領は「両国関係はより強化されると信じている」と述べ、アラブ首長国連邦(UAE)やクウェート、イラク、レバノンのイスラム主義組織ヒズボラなども当選を祝福した。一方、イランを警戒するサウジアラビアは反応を示していない。
 強硬派政権が誕生することで、イラク、シリア、レバノン、イエメンでは、イランの影響力拡大が予想される。各国と隣接するイスラエルのラピド外相はツイッターで「イランの新たな大統領は過激派で、核への野望を抱いている」と懸念を示した。

◆イブラヒム・ライシ師 アメリカの制裁対象

16日、テヘラン市内で演説するライシ師=蜘手美鶴撮影

 イラン大統領選で当選し、1979年のイスラム革命以降、8代目の大統領となる。イスラム法学者で、80年代に検察官として任官して以来、検事総長など司法の要職を歴任。最高指導者ハメネイ師が大統領だった80年代にあった政治犯の大量処刑に関与したなどとして、人権侵害などを理由に米国の制裁対象にもなっている。
 ハメネイ師と関係が近く、次期最高指導者との声もある。2016年にはハメネイ師が任命し、イスラム教シーア派の聖地イマーム・レザーびょうを運営する有力宗教財団の最高責任者に就任。財団は経済や文化など幅広い分野で事業を手掛け、国内では精鋭軍事組織「革命防衛隊」に次ぐ大規模な組織で、責任者を務めた3年間で革命防衛隊と良好な関係を築いたとされる。
 19年に司法府代表になって以降は、政府の汚職事件取り締まりなどを積極的に進め、汚職と闘うクリーンなイメージづくりに力を入れてきた。
 17年の大統領選に出馬したが、現職のロウハニ大統領に惜敗した。政治経験が少ないことから、バランス感覚を培うことが課題との指摘もある。
 イラン政治専門のフィラス・イリエス・モスル大教授(イラク)は「ハメネイ師の考えや政策を体現する存在。なるべくして大統領になったといえる」と話す。

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