<ひと ゆめ みらい>戦没学友、朗読劇で伝える 「一橋いしぶみの会」世話人代表・竹内雄介(たけうち・ゆうすけ)さん(70)=国立市

2021年6月21日 07時16分

柴田勝見さんの等身大パネルの横で思いを語る竹内雄介さん=国立市で

 「記憶と事実。私たちはこの二つで柴田さんに近づくことができる」。動画の中で若い劇団員が語り掛ける。一橋大(旧東京商科大、本部国立市)の卒業生で、一九三二年ロサンゼルス五輪・ホッケー銀メダリストの柴田勝見さんの足跡をたどる朗読劇動画「ある戦没オリンピアンの日記」が、十二、十三両日にオンライン開催された大学祭で配信された。
 「一橋いしぶみの会」の世話人代表を務め、動画を企画・制作した。会は二十年前に卒業生有志が結成し、毎年二回、戦争で犠牲になった学生と卒業生の追悼会を開催。戦後七十年の二〇一五年に「戦争と一橋生(いっきょうせい)」をテーマに企画展を開いたのを機に、六月と十一月の大学祭で戦没学友の生涯を紹介している。
 「一人一人の人生を伝えることで記憶に刻まれる。それが戦没学友の追悼になり、平和の尊さを考えるきっかけになる」と力を込める。新聞部員とともに大学や同窓会の資料を調べ、遺族への聞き取りを通して生涯を追ってきた。調査で新たな犠牲者が判明すると、大学の一角に建立された記名碑に名前を加えている。八百十余人とされていた戦没学友は、現在八百三十七人になっている。
 戦後生まれだが、幼いころから母の戦争体験を聞いてきた。キューバ危機が起きた一九六二年は米ニューヨークで暮らし、核戦争の恐怖を肌で感じた。大手銀行に就職し、二十年に及ぶ海外赴任の中で幾度も戦争や紛争の影響にさらされた。「複雑な気持ちだが、戦争と縁があるのかもしれない。だからこそ平和を願わずにはいられない」
 会の活動を通して遺族や学生らとのつながりは広がった。パネル展示が中心だった企画展に合わせ、朗読劇を上演しようと考えたがコロナ禍で不可能に。そこで動画の制作に切り替えた。柴田さんの日記を基に、演劇部のOBが脚本を手掛け、現役の劇団員や自身も出演した。
 出征前の日常から戦地での任務まで克明に記された日記は、別人が書いたとみられる「戦死」の文字で終わる。「これが柴田さんの生きていた世界の空気なのか」「これが戦争なのか」。出演者はそれぞれに思いを巡らせる。
 動画を見ながら「記憶を継承しなければ」との思いを強くする。「新型コロナが収束したら、大学の兼松講堂で戦没学友の生涯をたどる演劇を上演したい」(服部展和)
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 1950年、兵庫県西宮市生まれ。父の転勤で小学生時代に海外生活を経験した。74年に一橋大経済学部を卒業し、大手銀行に入行。オーストリア、ドイツ、英国で駐在員を務めた。帰国後に「一橋いしぶみの会」に入り、2016年から世話人代表。21日に国立市の旧国立駅舎で開かれる「くにたち平和の日展」でパネル展示と朗読劇動画(ダイジェスト版)の上映がある。動画はユーチューブでも公開している。

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