<ひと物語>女性経営者の視点を 日本跡取り娘共育協会代表理事・内山統子さん

2021年6月21日 07時35分

地域の物産のブランディングをしながら、女性経営者らの支援に取り組む内山統子さん=所沢市内で

 企業の経営者で女性はマイノリティー(少数派)だが、少子化により、今後は女性が後を継ぐケースが増えると見込まれる。一般社団法人「日本跡取り娘共育協会」代表理事の内山統子さん(40)は、多様性のある社会の実現には女性経営者の力が不可欠だとして、「跡取り娘」への事業承継や経営を支援している。
 協会が定義する「跡取り娘」は親が経営する会社に入り、後を継ぐ意志がある、あるいは役員など経営に携わっている女性のこと。内山さん自身は「跡取り娘」ではないが、関心をもったきっかけは、ブランディングの仕事を請け負った女性との出会いだった。
 女性の父親は経営者だった。女性は後を継ぐことを望んだが、「娘だから」という理由でかなわず、父親を憎みながら自分の存在意義を探り続けていた。教育事業を立ち上げる女性に助言を依頼された際、自信なさげな様子が気になった。自己肯定感の低さはどこから来るのか、ビジネス面にとどまらず、女性の心に寄り添う対話を重ねた。
 三カ月ほどたったころ、女性が「ようやく光が見えてきた気がします」とつき物が落ちたような表情で話した。自らを見つめ直す中で、気持ちに整理がつき、父親に対する憤りや悲しみから解き放たれたようだった。女性が自分の道を切り開いた瞬間に立ち会えたことがうれしかった。
 「これほど家と自分のアイデンティティーを縛るものって何だろう」。それからは依頼された仕事だけでなく、それぞれの家業に関わる女性たちの内面にも目を向けた。すると優秀なのに能力を発揮できていない女性が大勢いることに気付いた。親から兄弟と同じような期待や熱意をかけられずに育ち、傷ついたり、自分を諦めたりしていた。性別によって色眼鏡で見られているのをもったいなく感じた。

女性経営者らのオンラインサロン「跡取り娘.com」のトップページ

 家業を継いだ女性経営者も悩みや孤独感を抱えていた。会社経営と家事、育児のバランスをどう取れば良いのか。男性経営者が圧倒的に多い中、同じ立場で本音を言い合える場が必要だ。二〇一九年五月に協会を設立し、オンラインサロン「跡取り娘.com」を立ち上げた。会員同士で悩みを共有するほか、ロールモデルとなる「跡取り娘」から経営理念などを学び、各自の経営や新規ビジネスに役立てることを目指す。
 「もしも自分が跡取り娘だったら、設立しなかったと思います。跡取り娘の社会的な価値が、きっと分からなかっただろうから」と内山さん。「跡取り娘」には親から受け継いだ資産があるからこそ先進的な取り組みに挑戦しやすく、家庭や地域社会との関わりが深い生活者の目線を事業に生かせる強みがあるとみる。
 「あらゆる境界を取り払いたい」。男性と女性、双方の視点をバランス良く取り入れることで、誰もが暮らしやすい社会になる−。そう信じて、「跡取り娘」たちを支えている。(飯田樹与)
<うちやま・のりこ> 1981年4月生まれ、所沢市出身。大手総合印刷会社、大手広告代理店、2012年にブランディング事務所「ソラローブ」(所沢市)を起業。1児の母。19年5月に一般社団法人日本跡取り娘共育協会(東京都)を設立。同協会は、希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」の導入など、女性が働きやすい社会を目指した活動もしている。

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