「生理の貧困」中国の高校生がタブーに挑んだ 小中高生らに生理用品1年分700人に寄付

2021年6月22日 06時00分
<中国共産党100年 党と女性㊤>

中国四川省涼山イ族自治州昭覚県の中・高校で昨年10月、生理用品の入った紙袋を手にする生徒ら=彭さん提供

 人口約2000万人の中国四川省成都市に住む高校生、彭琬芊ほうえんせんさん(18)と同級生ら十数人は卒業を控えた4月、車で約10時間の同省涼山イ族自治州昭覚県を訪れた。子どもを祖父母に託し、両親ともに出稼ぎに出ることが珍しくない貧村だ。

◆小遣い少なく「ざらざらの紙」使う

 「生理は病気ではない。正常なことだよ」。小学校などで性教育を行い、寄付を募って用意した生理用品1年分を、昨年10月と合わせて計700人に手渡した。
 大半が寄宿舎に住む児童らの小遣いは月2~10元程度(1元は約17円)。ほぼ半数の女児が生理用品を買えず、トイレットペーパーや布を使う。ざらざらの紙の痛みで教室の椅子から立ち上がれなかったり、「おなかが痛い」といって毎月1週間ほど欠席する女児も少なくないという。

 中国四川省涼山イ族自治州昭覚県の小学校で、一部の児童らが生理用品の代用にするトイレットペーパー=彭さん提供


 新型コロナウイルス禍を機に、生理用品を買えない「生理の貧困」が世界中で認識された。生理について語ることが日本にも増してタブー視される中国で初めて、彭さんたちはこの問題に正面から挑んだ。彭さんは「休めば勉強が遅れる。教育や将来に関わる問題でもある」と話す。

◆米国の活動が刺激に

 「米国や英国、インドにはあるのに、中国では見つからず、とても驚いた」
 彭さんは昨年冬、「生理の貧困」に取り組む米国の活動に刺激を受け、同級生らとともに中国に類似の活動がないか調べていた。しかしこの問題に、中国国内から取り組んだ活動や報道は見当たらない。
 不思議に感じた彭さんらは、四川省涼山イ族自治州昭覚県の小学校に協力してもらい、アンケートを行った。教師によると、小学6年の女児はほぼ全員が初潮を迎えていたが、大部分が「生理が来ていない」と答えた。匿名のアンケートにも正直に答えられないほどの強いタブー感が浮かぶ。
 彭さんらが挑んだのはこうしたタブーそのものだ。

◆月経、ナプキン…単語ゲームで緊張ほぐす

5月中旬、北京市内で取材に答える彭さん=中沢穣撮影

「お姉さんたちが『物資』を持ってきてくれました」。昨年10月、昭覚県の小学校で児童らに彭さんらを紹介した教師は「生理用品」という言葉を避けた。慣れない状況に緊張する児童らは、手をつなぎあって教室に集まった。彭さんの同級生が「月経」と口にした瞬間、児童らは戸惑ったように顔を見合わせた。
 性教育の講座ではまず緊張を解くため、月経や生理用ナプキンという単語を使ったゲームをした。生理の仕組みや生理用品の使い方などを教える講座を終えると、複数の女児が抱えていた悩みや経験を話した。
 彭さんは「少なくとも『生理が来た』と話せるようになった」と手応えを感じる。生理用品をきちんと使えれば、生理によって学校を休んだり、授業に集中できないことも減らせる。彭さんは「『生理の貧困』は子どもたちの自尊心や将来にも関わる」と意義を話す。新学期が始まる9月以降は、学校の後輩たちが活動を引き継ぐ。

◆習政権で男女平等後退

 中国でも女性をめぐる問題への関心は高い。彭さんは複数の非政府組織(NGO)や同自治州の政府系婦人団体などの協力があったと強調する。生理用品を購入する資金は中国のIT大手テンセントがネット上で運営する寄付サイトを通じて集め、28時間で13万元(約220万円)に達した。小学生と中高校生の計700人が生理用ナプキンを受け取った。
 共産党政権は女性の社会進出を後押しし、世界経済フォーラムによる男女平等の国別ランキングでは日本より上位につける。しかし習近平しゅうきんぺい政権が発足すると、2011年の61位から10年間で107位に下がった。習政権は今年2月に貧困人口ゼロを意味する「脱貧困」を宣言したものの、広大な中国で「生理の貧困」はほぼ手つかずだ。女性問題に取り組んできた北京の李麦子りばくこさん(32)は「この国の政策には女性への視点が欠けている」と訴える。
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 建国の父、毛沢東もうたくとうが「女性は世界の半分を支える」と語った中国で女性は「解放」されたのか。女性を巡る問題に挑む人々の声を聴いた。(北京・中沢穣)

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