顔面神経まひ、放置禁物 突然 片側が引きつる異変 ヘルペスウイルス原因 多く

2021年6月22日 08時09分
 ある日突然、顔の片側にゆがみが生じ目を閉じられなくなったり、飲もうとした水が口から漏れたりする顔面神経まひ。口唇炎などを引き起こすヘルペスウイルスが原因になるケースが最も多い。放置するとまひが残る可能性もあり、異変に気づいたらすぐに治療を始めることが重要だ。 (細川暁子)
 二月に顔の右側が突然動かなくなった東京の女性(56)。背中から頭にかけてピリピリと痛みを感じたのが最初だ。翌朝、顔が引きつっている気がして右目が閉じなくなっていた。「何が起きたか分からずショックだった」と振り返る。
 顔の筋肉を動かす顔面神経は、脳から出て耳の中を通り、目や鼻、唇につながっている。国内で顔面神経まひを発症するのは毎年二万〜三万人で、珍しい病気ではない。男女の差はなく、症状が出るのは片側だけで耳鼻科での治療が中心。治療すれば八〜九割が治る。
 まひのタイプにはいくつかあるが、ヘルペスウイルスが原因の「ベルまひ」が六〜七割とされる。口唇炎などが治まった後も体内に潜んでいたウイルスが再び活性化して起きる。疲労やストレスなどが引き金になると考えられ、炎症を起こして腫れた顔面神経が、周囲の骨に圧迫されて傷つき、血流も悪くなってしまう。
 女性は幼いころから口唇ヘルペスができやすかったという。総合病院の耳鼻科を受診したところ、即入院に。十日間にわたって炎症を抑えるステロイド薬による治療を受けたが、顔の右側は動かないままだった。
 その後、国立病院機構東京医療センターに転院。全身麻酔の上、顔面神経周辺の骨を削って圧力を取り除く「神経減圧術」を受けた。手術から約三カ月がたち「少しずつ口元を動かせるようになり、前向きな気持ちが出てきた」と喜ぶ。
 同センター耳鼻咽喉科医師の和佐野浩一郎さん(42)によると、ベルまひの場合は、発症後できるだけ早くにステロイド薬を使うのが基本だ。欧米の診療ガイドラインは、五十ミリグラム、または六十ミリグラムで治療を始め、十日ほどかけて徐々に減らしていくことを推奨。効果が表れるのは、早い人で一カ月ほど後という。
 一方、日本では治療開始時の投与量が、経験に基づいた医師の裁量に委ねられているのが現状だ。欧米のガイドラインより少ない三十ミリグラムから始めることもあれば、二倍以上の百二十〜二百ミリグラムといった量を使うことも。治療効果を見極めるための大規模な研究が行われてこなかったためだ。
 そこで、和佐野さんは二〇二〇年三月から、同センターを含め全国十九の病院と共同で研究を開始。同意を得た患者を無作為に二グループに分け、一方には欧米標準量の六十ミリグラム、一方には百二十ミリグラムを投与し、治療効果と副作用を評価する。二三年までの三年間で五百人を超える患者に参加してもらうことが目標。既に約百五十人が参加した。
 ただ、研究を続けるには資金が必要だ。和佐野さんは六月上旬から、クラウドファンディング(CF)で寄付を募っている。七月二十九日までで、目標は三百万円だ。「命に関わる病気ではないが、人前に出るのが嫌になるなど患者の人生を変えることもある」と和佐野さん。「明確な治療基準を確立するため力を貸してほしい」と訴える。
 CFは「アカデミスト 顔面神経麻痺」で検索。

関連キーワード

PR情報

健康の新着

記事一覧