<社説>五輪観客上限 なし崩しの拡大許せぬ

2021年6月22日 08時27分
 東京五輪・パラリンピックを巡り、政府と国際オリンピック委員会(IOC)などの五者協議は、会場の観客数の上限を一万人とすることで合意した。「無観客が望ましい」とした専門家の提言を無視した結論で、なし崩し的な規模拡大は許されない。
 観客数の上限は、会場定員の50%以内で最大一万人とされた。定員六万八千人の国立競技場=写真=なら観客は一万人。定員二万人以下の多くの会場では定員の50%となる。政府の大規模イベントの観客制限を踏まえたという。
 しかし、最大一万人は、まん延防止等重点措置を解除した後の人数だ。二十一日に緊急事態宣言から重点措置に移行したばかりの東京都で、期限通り七月十一日に重点措置が解除できるか否か分からないのに、上限を一万人とするのは「見切り発車」ではないか。
 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志による「無観客」の提言は、無視された形となった。菅義偉首相は観客を入れての開催を繰り返し表明しており、「結論ありき」と批判されても仕方があるまい。
 上限一万人としながら、競技団体役員や大会スポンサーの招待客ら大会関係者、学校との連携で観戦する児童生徒は枠外とした。基準を示す一方、なし崩し的に拡大する姿勢は容認できない。
 緊急事態宣言の再発令や重点措置継続の場合、無観客としたり、上限を五千人に減らす余地を残した。感染状況が深刻化したら、政府のさじ加減ではなく、躊躇(ちゅうちょ)なく無観客に移行すべきだ。
 心配なニュースも入ってきた。来日した外国選手の一人が、成田空港でのPCR検査で陽性と判明した。事前にワクチンを二回接種し、出国前七十二時間以内の検査では陰性にもかかわらずだ。
 ワクチンの効果やウイルス検査の感度に限界があることは、これまでも指摘されてきた。何重ものチェックをすり抜けるケースが起きることを予感させる。
 選手らを泡のように包み、外部との接触を絶つ「バブル方式」が本当に有効なのかも、再検討すべきだ。

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