決裁文書「議員に持って行くつもりない」 森友問題「赤木ファイル」ににじむ財務省の「本音」

2021年6月23日 06時00分
 財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が残した「赤木ファイル」には、財務省が乱発した改ざん指示メールが多数残っていた。中には、佐川宣寿のぶひさ理財局長(当時)から財務局が「直接指示」を受けたことなど、同省の自主調査が明らかにしなかった内容もある。財務省本省がなぜ強い意思で改ざんを指示したのか、動機は依然として見えず、弁護団は「再調査が必要だ」と指摘した。(渥美龍太、森本智之、桐山純平)

◆安倍昭恵氏の表記削除「できる限り早急に」

 「削除した方が良いと思われる箇所があります。マーキングしておきました」。財務省理財局が赤木さんら近畿財務局の職員に送った2017年2月26日のメールにはこう記されていた。文書のどの箇所を改ざんするかを具体的に示し、一連の改ざんが始まったきっかけになった。
 その9日前の2月17日。安倍晋三首相(当時)は国会で、森友問題に自分や妻が関係していた場合は「首相も国会議員も辞める」と答弁していた。財務省は改ざんの発端となった26日のメールで、「安倍昭恵総理夫人」などの表記で2度登場する安倍氏の妻に関する表記に印を付け、「できる限り早急に」と、文書から削除するよう迫った。
 赤木さんはこの日のことを「本省からの指示を受け、急きょ登庁」と備忘録に記載。財務省は「昭恵氏」削除などを指示した26日午後3時48分以降も、メールをさみだれ式に財務局に送信。同日午後9時5分まで、双方で計10本以上のメールのやりとりがあった。

◆「予算止めるのは勘弁」財務省の本音か

 財務省本省から財務局へのメールには、国会審議を乗り切るためだったのか、財務省が文書を隠蔽しようとする「本音」も記されていた。安倍氏の答弁の前から、森友関連の決裁文書の提供を求めていた民進党(当時)の衆院議員、福島伸享氏への文書提出要求に対してメールで「議員に持って行くつもりはまったくなく」と送信。「これを理由に予算を止めるのは、勘弁してほしい」とも記載されていた。
 福島氏は本紙の取材に「『廃棄した』と言い逃れができないよう、文書保存の義務がある文書に絞って提出を要求した。この要求がアリの一穴となり、改ざんに手を染めたのではないか」と推測した。

◆財務省の調査に残る疑念

 財務省の佐川局長から「直接指示がありました」とのメールもあった。18年6月に公表した財務省の調査報告書では、佐川氏の関与は「念押し」などとぼかしており、調査内容には疑念が残る。
 だが、今回開示されたメールでも、本省でどんな理由で改ざんに至ったかに関しては明確にならなかった。そもそも、問題の発端となった国有地の森友学園への約8億円の値引きの経緯については依然不明だ。
 赤木ファイルの公開後に開いた弁護団の記者会見で、松丸正弁護士は「どういうルートで指示がなされたのかの事実解明が課題。国会の中で第三者を入れた形での解明を、裁判とは別にやってほしい」と述べた。

森友学園問題 小学校の新設を計画していた学校法人「森友学園」が、大阪府豊中市の国有地を8億円余りの値引きで購入していたことが2017年2月に発覚。安倍晋三前首相の妻昭恵氏の影響などで土地の価格が不当に安くなったとの疑惑が浮上した。財務省は、昭恵氏や政治家に関係する記述を削除するなど公文書を改ざん。近畿財務局の元職員赤木俊夫さんは、財務省理財局長だった佐川宣寿氏らの指示で改ざんを強いられたとして自殺した。

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