影絵の巨匠、藤城清治展がソウルで開催 日韓交流の願い込め韓国芸術界も協力

2021年6月23日 12時00分
 影絵の第一人者、藤城清治さん(97)の作品展が、ソウルの「芸術の殿堂」で始まった。90歳を超えて作品を作り続ける藤城さんが、今回のために制作した約20点を含む約170点を展示。関係が冷え込む日韓交流の願いを込め、韓国の芸術界も開催に協力した。(ソウル・中村彰宏)

今回の作品展のために制作した「眠りの森」©Seiji Fujishiro/HoriPro

 10代に描いた油絵から初期のモノクロ影絵、近年まで全時代を網羅。1960~70年代にテレビで人気を集めたカエルのキャラクター「ケロヨン」の作品もある。「眠りの森」などの新作については「人生最後の作品だと思って精魂込めた」と言い、1日に7時間、作業する日もあったという。
 藤城さんが韓国で作品展を開くのは2005年以来2度目。当初は昨年6月に予定していたが、新型コロナウイルスの影響で延期になった。

人気キャラクター「ケロヨン」の作品も展示されている=ソウルの「芸術の殿堂」で(中村彰宏撮影)

 作品展を企画した当時は、日本政府による輸出管理強化で日本製品の不買運動の真っただ中。主催したKアートコミュニケーション代表の姜慧淑カンヘスクさんは「後援企業が集まらず苦労したが、文化・芸術は、政治や歴史の問題とは別。文化交流が日韓関係改善のきっかけになってほしい」と話す。
 会場入り口に飾られた藤城さんの肖像画は、針金で著名人を描く韓国の芸術家、金容鎮キムヨンジンさんが制作した。短く切った無数の針金をキャンバスに差して顔のしわや髪の毛まで精巧に表現し、額の中の藤城さんの笑顔はまるで写真のよう。金さんは「作品を作り続ける情熱に共感した。国の関係が悪くても文化の交流は続けることが大切だ」と話す。

針金で描いた藤城さんの肖像画と制作した金容鎮さん=ソウルで(中村彰宏撮影)

 展示作品を解説する音声ガイドは、舞台やドラマなどで活躍し、日本に留学経験のある人気俳優のチェ・ムソンさんが担当した。
 新型コロナがなければ訪韓する予定だった藤城さんは「みんなが一つになれる助けに作品展がなれば。生きる喜びや生きる楽しみを感じてもらいたい」と話しているという。作品展は10月12日まで。

 ふじしろ・せいじ 1924年、東京都生まれ。慶応大時代に影絵の制作と人形劇団の活動を始めた。48年から96年まで雑誌「暮しの手帖」で影絵を連載。95年に勲四等旭日小綬章を受章。東日本大震災の被災地も描いている。

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