<炎上考>「リカちゃんの個人情報を暴露」ビジョンを損なった玩具メーカーの悪乗りツイート 吉良智子

2021年6月24日 11時45分
女児の大好きなリカちゃん人形

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 SNSが発達した昨今、個人情報は極めて慎重に取り扱うべきだという考えは、もはや常識となった。特に子どもの場合は、顔写真など含めて慎重にならざるをえない。子どもを狙った犯罪、特に性犯罪が後を絶たないからだ。幼さや純粋さにつけこむ犯行は卑劣そのもの。そんな社会で、もし「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグで、子どもの個人情報がネット空間にさらされたら、どうなるだろうか?
 玩具メーカー大手タカラトミーの公式ツイッターが昨年、たまたまトレンド入りしていた「#個人情報を勝手に暴露します」のハッシュタグに便乗し情報発信した。
 「(とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね…!)」として、着せ替え人形「リカちゃん」の誕生日、身長や体重、電話番号などの公式プロフィール情報が掲載された。続けて、「久しぶりに電話したら、昨日の夜はクリームシチュー食べたって教えてくれました。こんなおじさんにも優しくしてくれるリカちゃん…」というツイートなども投稿された。
 このプロフィール自体は周知の設定で問題はないのだが、「暴露」というノリで、子どもへの性犯罪を想起させる文章に驚きと批判が相次いだ。ツイートも、本来なら大人が保護すべき子どもに対して、成人男性が「優しくしてほしい」とケア役割を期待しているように読み取れた。子どもの夢を育むはずの玩具メーカーが、自らそのビジョンを損なったといえよう。
 そもそも戦前の女児が遊ぶ人形は、赤ちゃんに似せた抱き人形が主流だった。良妻賢母思想に基づいて、女児に母役割を教え込むためである。だが、戦後登場したリカちゃんは現実の少女の姿形に近づけられ、医師やショップ店員など多彩な職業の着せ替え遊びが可能に。遊びを通して、女児に「母になること」以外の選択肢を教えてくれた。
 くだんのツイートは炎上し、発信元のタカラトミーが「社会の一員として守るべきモラルに欠ける内容」だったとして削除した。同社には原点に立ち返り、子どもに寄り添う姿勢を取り戻してほしい。

 きら・ともこ 美術史・ジェンダー史研究者

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